【野球を歩く・札幌編】白い静寂の中、今井達也の開幕戦勝利をどう伝えるか練り上げる

たまに無性に長距離を歩きたくなります。単に歩くのもしんどいので、何か「野球」を感じながら。西武担当を任命された今季、各地で歩きます。そんなわけで連載「野球と旅を、こじつける。」のスピンオフ「野球を歩く」の第1回は北海道編です。

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■雨なら歩きたくないけれど、雪なら別にいい。

旅の出発地は「札幌市時計台」だ。別に札幌駅でも、どこでもいい。

時計台の近くに宿泊したから、時計台がスタート。嫌になるほど歩くのに、わざわざスタート地点まで何分も歩くのも面倒だ。

3月6日朝、十分に雪が残る札幌にまた雪が舞った。雨なら歩きたくないけれど、雪なら別にいい。

セイコーマート時計台前店でベーコンおかかおにぎりを買い、かじりながら6時53分に出発。終着点は日本ハム―西武のオープン戦が行われる北広島市のエスコンフィールドだ。20キロ少々の距離となる。

市街地のメイン通りは除雪済み。少し郊外に出ると歩道はもう、雪の底。10センチほどの積雪ががっちり凍結した上を歩く。昨夜の降雪のおかげで、ツルツルと滑らずに済む。

傘をさして歩いた。やがて気付く。札幌の人は雪が舞うのに、通勤通学時にほとんど傘をささない。

フードをかぶり、肩をすぼめて小さくなりながら歩く。これが北海道スタイルなのかと知る。

歩道橋の上は完璧な除雪がなされていた。というか完璧すぎて、きっと融雪システムがあるのだろうと悟る。転倒したら一番危ない場所だから。

東札幌あたりではもう、もっさりとした雪の中。道路の向こうに柴犬が楽しそうに歩く。「撮っていいですか~?」と尋ね、飼い主さんから快諾を得た頃には柴犬はもうテクテク前方へ。歩き慣れている。

ようやくペースをつかみ始めて、なんで雪の中を歩いているんだろうとあらためての自問自答だ。

歩くだけの行為は、考える時間の創出だ。通勤時間は1人だけれど、1人になれない。広告の世の中。あちこちに情報の渦。

全てをシャットアウトし自分だけに向き合う。埼玉西武ライオンズ、今年はどうなるんだろう。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。