

監修歯科医師:
木下 裕貴(歯科医師)
毛舌の概要
毛舌(もうぜつ)は舌の表面に毛が生えたように見える一時的な病変です。一般人口の約13%に発生すると言われており、誰にでも起こる可能性があります。一般的に高齢者に多く見られ、女性よりも男性に起こりやすいです。
(出典:The American Academy of Oral Medicine「毛舌」)
毛舌は主に口腔内の不衛生や、長期間の抗生物質やステロイド剤の使用によって引き起こされます。
舌は約1mmの長さの糸状乳頭(表面のザラザラしている部分)と呼ばれる円錐型の突起に覆われており、毛舌では糸状乳頭に異常が生じます。
口腔内の細菌が増殖し、糸状乳頭にケラチンというタンパク質が蓄積されることで、糸状乳頭が異常に長く伸びて発生します。
糸状乳頭は本来、食べ物を舐め取りやすくして、舌の表面の感覚を鋭敏にする役割を持ちます。
毛舌が発生しても、多くの場合は無症状で経過し、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。
しかし、細菌や真菌(カビ)がたまると、ヒリヒリ、チクチクするような痛みが生じる灼熱感(しゃくねつかん)が起こることもあります。
重症化すると、糸状乳頭が髪の毛のように長くなり、黒色や褐色、黄色、赤色、緑色などに変色することもあります。
基本的には歯ブラシや舌ブラシによって口腔内の衛生状況を良好に保つことで改善されますが、病変がなかなか改善しない場合は、薬物療法が必要になることもあります。
毛舌は一度治っても再発する可能性が高いため、予防するためには日々のブラッシングを欠かさずおこない、口腔内の衛生状況を維持することが重要です。
舌のブラッシングで吐き気や過敏などの不快感を感じる場合は、状態に適した舌ブラシを選択し、ゆっくりおこなってみましょう。
長期的な予防には、食後や就寝前のブラッシングによって、歯や舌を常に清潔にする習慣をつけることが不可欠です。
毛舌の原因
毛舌は主に口腔内の衛生状況の悪化や、特定の外的要因によって発生します。
食後や就寝前のブラッシングが不十分で口腔内が不衛生になると、毛舌が発生しやすくなります。
抗生物質やステロイド剤の長期服用は、口腔内の常在菌のバランスを崩し、細菌の異常な増殖を引き起こす可能性があります。
喫煙の習慣や頭頸部への放射線治療、大量のコーヒーや紅茶の摂取も毛舌の原因になることがあります。
感染症や糖尿病、腎臓障害、胃腸障害などで免疫が下がることで発生するケースもあります。
毛舌の前兆や初期症状について
通常、毛舌は無症状で経過し、舌の外観変化に気づくまで自覚しないことがあります。
しかし、細菌や真菌がたまって病変が悪化すると灼熱感が生じ、ヒリヒリ、チクチクする痛みが起こることもあります。
食べ物を飲み込む際に軟口蓋にかゆみを感じたり、わずかな吐き気を覚えたりすることがあります。
また、舌表面の変化により、味蕾(みらい)という食べ物の味を感じ取る舌の器官に、食べ物の残りかすが蓄積しやすくなって、口臭や味覚の変化が起こる場合もあります。
これらの症状は軽いことが多く、日常生活に大きな支障をきたすことはほとんどありません。
毛舌の検査・診断
毛舌の診断には特別な検査はなく、主に臨床症状で診断されます。
典型的な所見として、舌の糸状乳頭が異常に延長し、角化が進んだ状態が見られます。
糸状乳頭が延長するのは主に舌の後方部分ですが、まれに舌表面の全体に及ぶこともあります。
色調も多様で、黒色や褐色、黄色、赤色、緑色などの色を呈することがあります。
診断のときは、毛舌の原因を特定し、適切な対処法を決定するために、患者の基礎疾患や現在の投薬状況を詳しく聴取することも重要です。
毛舌の治療
毛舌の治療は、口腔衛生の改善と原因の除去が中心になります。
毛舌が生じた場合は歯ブラシや舌ブラシを用いてブラッシングしながら、口腔内の衛生状況を常に良好にすることが重要です。
特に喫煙した後や、コーヒーや紅茶を飲んだ後は、ブラッシングやうがいを心がけましょう。
舌のブラッシングやうがいの習慣は、舌の表面に付着した汚れや細菌を効果的に取り除き、健康な状態を維持するのに役立ちます。
抗生物質やステロイド剤の長期使用が原因の場合は、投与を控えるよう医師から指示されることもあります。ただしこれらの薬剤の投与は自己判断で中止することのないよう、必ず医師の指示に従うことが重要です。
毛舌がなんらかの疾患で発生した場合は、疾患の治療を優先することが重要です。
糖尿病や消化器疾患などの全身疾患が関与している場合は、それらの管理的な治療が必要となります。
症状が重度の場合や持続する場合は、医師の指示のもと、殺菌剤や抗菌薬を舌に直接塗布することもあります。
また、真菌感染が原因で発生している場合は、抗真菌剤の使用が効果的なケースもあります。
毛舌になりやすい人・予防の方法
毛舌になりやすい人は口腔内が不衛生な人や、抗生物質やステロイド剤を長期服用している人、喫煙習慣がある人、頭頸部への放射線治療の経験がある人、コーヒーや紅茶を摂取する習慣がある人です。
予防には、毎食後や就寝前に口腔内をブラッシングすることが重要で、舌表面も清潔にすることが大切です。
舌の清掃時に吐き気や過敏などの違和感を感じる場合は、小さな舌ブラシを使用し、ゆっくりと動かしながらブラッシングすることで対処できます。
適切なブラッシングを習慣化することで、口腔内の衛生状態を保ち、毛舌の発生リスクを減らせます。
喫煙や過度のコーヒー・紅茶の摂取を控えることも、予防に効果的です。
参考文献