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「悪性リンパ腫が転移」しやすい部位はご存知ですか?検査方法も解説!

 公開日:2024/05/15
「悪性リンパ腫が転移」しやすい部位はご存知ですか?検査方法も解説!

日本での悪性リンパ腫の患者さんは増加傾向にあります。発症のピークは70歳代ですが、小児・成人でも一定数発症する病気です。

リンパ系組織は全身を巡る器官であるため、悪性リンパ腫になると「腫瘍が全身に転移して寿命を削ってしまうのではないか」と不安になる患者さんもいるでしょう。

悪性リンパ腫は転移しやすいがんですが、医療の進歩により長期生存率が向上している病気です。悪性リンパ腫と転移について正しい知識を身につけましょう。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫とはリンパ球ががん細胞になり過剰に増殖する「血液のがん」の一種です。
リンパ球は病原体などから体を守る白血球の中にいる細胞で、脾臓・扁桃・血液中・その他全身に存在しています。
悪性リンパ腫になるとリンパ球が過剰に増殖・暴走することで、リンパ節が腫れたり、高熱・食欲低下などの全身症状が見られたりします。

悪性リンパ腫は転移する?

悪性リンパ腫は転移が認められる病気です。
リンパ球がリンパ管を通って全身を循環する組織であるため、リンパ腫も全身を循環しリンパ菅の外に拡がりやすい環境にあります。
悪性リンパ腫の進行度を4段階で示す病期(ステージ)分類で、「リンパ管とはまったく異なる場所(骨髄・髄液の中など)にもリンパ腫の細胞があるもの」は最も進行した病期4に分類されます。

悪性リンパ腫が転移しやすい部位

悪性リンパ腫が転移しやすい部位として以下のような部位が挙げられます。

  • 脾臓
  • 肝臓
  • 骨髄など

以上の部位にリンパ腫が転移すると、どのような症状が表れるのでしょうか。リンパ管をつなぐリンパ節の症状と一緒に確認しましょう。

リンパ節

リンパ節は平均して600個程が全身に散らばり、免疫反応を調整する役割を果たしています。代表的なリンパ節がある箇所としていくつか例を挙げます。

  • 扁桃
  • 鎖骨下
  • 傍大動脈
  • 腋窩
  • 縦隔
  • 鼠径など

どの部位のリンパ節にどの程度の腫れが表れるかには個人差があります。
リンパ節が腫れた場合、初期段階では違和感・しこりを感じる程度ですが、重度まで進行すると痛み・しびれが生じ、リンパ節の部位によっては窒息・食欲低下・歩行困難まで引き起こします。

悪性リンパ腫が肺に転移しても、腫瘍がかなり大きくなるまで自覚症状は表れないのが一般的です。
悪性リンパ腫が肺の付け根である肺門に転移し症状が進行すると、痰に血が混ざる・息苦しく感じられるなどの症状が見られます。
さらに発熱を伴う肺の炎症である肺炎・肺が空気を含まずつぶれてしまう無気肺などの病気を併発するケースもあるため気をつけましょう。また腫瘍細胞が胸の中に広がり、胸水を溜めてしまうこともあります。

脳と脳を守る無色透明の液体、髄液にも悪性リンパ腫が入り込むリスクがあります。
特に髄液は点滴などで投与した薬が届きにくい構造になっているため、治療が困難になります。
悪性リンパ腫の治療で主要な飲み薬・点滴のみの治療では、髄液の中からリンパ腫が再発するケースがあるため、背骨から直接髄液の中に薬を注入する髄腔内注射の治療が行われるのが一般的です。
脳にリンパ腫が転移すると初期では無症状ですが、進行すると頭痛・精神症状・けいれん・麻痺の症状が見られるようになります。

脾臓

脾臓とは左わき腹にある造血・リンパ器官です。主な役割は乳幼児期の血球生産で、成人後は血液量の調整・リンパ球の生産などを担っています。
悪性リンパ腫が脾臓に転移した場合、初期は無症状か腹痛を感じる程度ですが、重度になると背部痛を感じるようになります。

肝臓

腹腔内で最大の臓器となる肝臓は代謝機能・排泄機能など重要な役割を果たしているため全身との関わりが深く、ほかの臓器にできたほぼすべてのがんが転移する可能性がある臓器です。
悪性リンパ腫も例外ではなく、肝臓に流れ着いたリンパ腫が新たながん細胞の塊を形成すると転移性肝がんとなります。症状は、腹部のしこり・圧迫感・痛みが見られます。

胃に表れる悪性リンパ腫は胃悪性リンパ腫と呼ばれ、MALT リンパ腫と DLBCLの2種類がそのほとんどを占めています。この2種類の悪性リンパ腫は特徴・症状が異なります。
胃悪性リンパ腫の40%を占めるMALT リンパ腫では腹痛などの症状もありますが、自覚症状はまったくなく検診で発見されるケースも多いです。
対して胃悪性リンパ腫の45~50%を占めるDLBCLは自覚症状として腹痛に加え、嘔吐・血便などの症状が表れるがんです。悪性リンパ腫が胃に転移した場合、初期では無症状であるため腹部超音波(エコー)検査などで胃の異常を調べない限り転移を見つけられません。
病変が進むと食欲低下・上腹部痛・血便・腹膜炎などの症状が表れます。

骨髄

骨髄には造血幹細胞と呼ばれる血液のもととなる細胞があり、以下のような身体の機能維持に重要な血球を作り出しています。

  • 赤血球
  • 白血球
  • 血小板

そのため悪性リンパ腫が骨髄に入り込むと、本来身体に備わっている血液を作る力が抑えられてしまい血液内の血球が減少します。
その結果、息切れや動悸がする・あざができやすくなる・感染症を発症しやすくなるなどの症状が表れます。

悪性リンパ腫の転移を調べる検査

リンパ節の腫れがひかない・腫れて大きく膨張するといったリンパ節腫大が認められ悪性リンパ腫が疑われる場合、まずリンパ節の組織を観察して診断の確定をします。
同時に適切な治療をするために、リンパ腫の種類を特定します。悪性リンパ腫は大きくホジキンリンパ腫非ホジキンリンパ腫の2種類に分類が可能です。
さらに非ホジキンリンパ腫はもともとのリンパ球の種類によって、以下のように分類されます。

  • Bリンパ腫
  • Tリンパ腫
  • NK/Tリンパ腫

リンパ腫の種類を特定するために、どのような検査が必要になるのでしょうか。以下で解説します。

画像診断

リンパ腫の全身への拡がりを確認するために画像診断を行います。診断には以下のような機器が使われます。

  • CT
  • MRI
  • PET
  • PET/CT

主に体幹にあたる胸部から骨盤部にかけてを網羅的に確認するために用いられ、悪性リンパ腫の診療の中心的な検査となっています。

内視鏡検査

消化管に転移したリンパ腫の検査には内視鏡検査が有効です。リンパ腫を肉眼で観察すると以下のような特徴があります。

  • 表層拡大型(表層型)
  • 腫瘤形成型(潰瘍型)
  • 腫瘤形成型(隆起型)
  • 腫瘤形成型(決壊型)
  • 巨大雛襞型(巨大雛襞型)

肉眼の観察のみから診断はできませんが、内視鏡を用いれば組織診断するための検体を採取できます。

骨髄検査

悪性リンパ腫が骨髄に転移していることが疑われる場合、骨髄検査が必要です。
骨髄検査では腰の骨から骨髄液・骨髄組織を採取し、顕微鏡で観察してリンパ腫の有無を調べます。
採取の方法には注射器で骨髄液を吸引する骨髄穿刺と、特殊な太い針を刺して骨髄組織の一部を採取する骨髄生検の2つがあります。

悪性リンパ腫の転移についてよくある質問

ここまで悪性リンパ腫の転移・転移しやすい部位・検査方法などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫では転移しやすい部位が違いますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に限らず、リンパ腫の種類によって転移しやすい部位はそれぞれ異なります。悪性リンパ腫は大きく二分すると、大型で特徴的な形態をしたリード・スタンバーグ細胞が見られるホジキンリンパ腫と、見られない非ホジキンリンパ腫に分けられます。しかし細かく分けると、リンパ腫の種類・特徴などから100種類近くのタイプに分けられることを知っておきましょう。

転移を早期発見する方法はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

悪性リンパ腫の治療中には治療の効果が出ているか確認するために、定期的にCT・MRI・PETを用いて画像検査を行います。また肝臓・腎臓の状態を把握するために採血も定期的に行います。担当の医師はこれらの検査結果に注目しつつ転移に気を配って治療にあたるため、転移は早期発見しやすいでしょう。

編集部まとめ

悪性リンパ腫はリンパ球ががん細胞となる病気です。がん細胞となったリンパ球は増殖しながら全身を巡るため、転移が起こりやすい傾向にあります。リンパ腫が転移しやすい部位は以下のとおりです。

  • リンパ節
  • 脾臓
  • 肝臓
  • 骨髄

悪性リンパ腫の検査には以下の方法が挙げられます。

  • 画像診断
  • 内視鏡検査
  • 骨髄検査

悪性リンパ腫にはさまざまな種類があり、特徴・治療法・好発部位・進行スピードなどが異なります。発熱・リンパ系器官の違和感・しこりなどの症状が長引く場合はかかりつけ医に相談しましょう。早めの発見・リンパ腫の種類特定が治療をスムーズにします。

悪性リンパ腫と関連する病気

「悪性リンパ腫」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

悪性リンパ腫は全身に転移する可能性があるがんであり、併発する病気は患者さんによってさまざまです。信頼できる医師と二人三脚で治療を進める必要があります。

悪性リンパ腫と関連する症状

「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 激しい寝汗
  • 体重減少
  • しこり
  • 食欲低下
  • しびれ

悪性リンパ腫の症状は患者さんによって異なります。リンパ腫の腫れであるしこりも、身体の深い部分で起きていれば発見は困難です。発熱・リンパ管の違和感などが長く続く場合は、風邪に似た症状と軽視せず、かかりつけの医師に相談しましょう。

この記事の監修医師