大混セの渦中で「セ界のKOBAYASHI」が輝いた。巨人小林誠司捕手(34)が971日ぶりの衝撃1号ソロで決めた。1点リードの7回1死からヤクルト・ヤフーレのチェンジアップを左翼席最前列に放り込んだ。1回には吉川尚輝内野手(29)に1号先制ソロが飛び出し、伏兵の1発攻勢で競り勝った。今季2度目の3連勝で首位阪神を0・5ゲーム差で追走する。

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G党は熱狂し、燕党はあぜん、神宮は騒然とした空気に包まれた。1点リードの7回1死。小林がフルカウントから粘り腰で、左翼席最前列まで1号ソロを飛ばしたときだった。ど真ん中にチェンジアップを投げたヤフーレは、グラブを思いっきりたたき悔し紛れに叫んだ。プロ11年目の小林史上16本目。21年9月12日広島戦以来971日ぶりの1発だった。

打った瞬間、ベンチで誰よりも絶叫していた矢野打撃コーチは言った。「今まで悔しい思いもしていた。なんとか覆したいと今年頑張ってきたと思う。それを見てきたんで、僕もうれしかった。毎日練習を続けてきた、その成果が出た」。貴重な1点に、小林の仲間はみんな酔いしれた。

キャンプはプロ入り初の2軍スタート。阿部監督はこう言って送り出した。「どんな立場でいようと、腐らず練習はたくさんする男なので」。かつて正捕手だった男は、出場機会を減らし昨季まで5年連続100試合未満。キャンプは桑田2軍監督のもと、スイング数が限られる中で質を求めた。「考えながら、ただ数をこなすのではなくて。少ない中で質を上げたり」と小林。1軍参加は3月12日。最終コーナーでまくってつかんだ開幕1軍で、出場機会を徐々に増やし、ついに打った1発だった。

女房役として戸郷を7回1安打無失点と好リード。8回に自身の捕逸で1点献上するも、初回吉川の先制1号とともにソロ2発のリードを最後まで守り切った。阿部監督も「バット持っているんだよ。こういうのも野球。最高のゲームでした」。打って守って、ベンチもスタンドもSNS上も熱狂の渦。その渦中の小林は「僕は試合に出さしてもらった以上、全力で一生懸命やるだけなんで。また、そういう姿を見てもらえたらうれしいですし、感謝の気持ち持って頑張りたいなと思います」。小林が打つとみんな驚く。小林で勝つとみんな笑顔になる。【栗田成芳】

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