中国とハンガリーの蜜月なぜ続く? 「一帯一路」にEUで唯一参加

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中国の習近平国家主席(右)と握手するハンガリーのオルバン首相=ブダペストで9日、ロイター
中国の習近平国家主席(右)と握手するハンガリーのオルバン首相=ブダペストで9日、ロイター

 ブダペストで9日行われた、ハンガリーのオルバン首相と中国の習近平国家主席の首脳会談では、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を前進させるなど、経済連携の強化で一致した。両国にはどんな恩恵とリスクがあるのか。欧州連合(EU)の「問題児」とされるハンガリーと中国の蜜月の背景を追った。

EU内でハンガリーの孤立深まる

 習氏は会談後の記者会見で、両国関係について「史上最良の時期を迎えている」と表現した。

 2015年、EU加盟国として初めて一帯一路に参加したのがハンガリーだった。現在、欧州における基幹事業として、ブダペストとセルビアの首都ベオグラードを結ぶ高速鉄道の建設計画が進む。19年に着工し、26年に完成予定だ。24年2月には、ギリシャも計画への参加を発表し、路線はアテネまで延びる見通しだ。

 ギリシャは債務危機に陥った09年以降、国外からの投資が急減。その際、多額の投資で手を差し伸べたのが中国だった。中国はアテネに近いピレウス港で使用権の大部分を取得しており、高速鉄道の完成で、中国資本による人とモノの流れが、ギリシャ・ハンガリー間に生まれることになる。

 一方、欧州全体では中国資本への警戒感は強まっている。イタリアは19年3月、主要7カ国(G7)で唯一、一帯一路に加わった。中国による直接投資と貿易の拡大による経済回復を狙ったが、具体的な成果が得られず、23年12月に離脱を中国側に伝えた。

 22年2月のロシアによるウクライナ侵攻で、ロシア産天然ガスなどに依存してきた欧州各国は、経済安全保障への意識を高めた。G7とEUは経済の中国依存を避ける「デリスキング」戦略を進めており、イタリアの一帯一路離脱の要因となった。メローニ政権は23年6月、中国企業シノケム・ホールディングスによる伊タイヤ大手ピレリの株式買い増し時に介入し、経営への関与拡大を阻止するなど、中国資本への監視の目を強めている。

 またギリシャでもピレウス港で21年10月に起きた労働者の死亡事故をきっかけに、港湾を運営する中国企業の劣悪な労働環境が問題になった。ギリシャ国民の対中感情も以前より悪化したとされる。

 こうした警戒感を反映し、17年の一帯一路国際会議にはEU加盟国ではイタリア、スペイン、ギリシャ、チェコ、ポーランド、ハンガリーの6カ国の首脳が参加したのに対し、23年はハンガリーだけだった。中国はハンガリーを中心とする一帯一路の実績をアピールすることで、他の欧州諸国の関心を呼び戻したい考えだ。

EV市場進出へ思惑…

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