特集

円安と物価高

日本の物価が上がっています。円安・ドル高もコスト上昇に拍車をかけ、賃上げの動きも見られます。

特集一覧

好決算の背後に忍び寄る円安の影 小売りや旅行業に懸念広がる

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
決算発表がピークを迎え、報道各社のケースに関連資料を入れる企業の担当者ら=東京都中央区の東京証券取引所で2024年5月10日午後3時15分、新宮巳美撮影
決算発表がピークを迎え、報道各社のケースに関連資料を入れる企業の担当者ら=東京都中央区の東京証券取引所で2024年5月10日午後3時15分、新宮巳美撮影

 10日にピークを迎えた2024年3月期の決算発表は、円安を追い風に輸出や海外事業で外貨を稼ぎ、利益を伸ばした企業が目立った。一方、足元で加速する円安に対し、記者会見で企業幹部から懸念の声が相次いだ。特に小売りなど内需に支えられた産業は、競争力低下や消費の弱さといったマイナス面が顕在化する恐れもある。

 「どれも結構いい値段だな」。5月上旬、東京都内の家電量販店に立ち寄った60代の男性会社員は、さまざまな製品の値上がりぶりに戸惑った。「余計なものは買わないように」と自分に言い聞かせ、足早に店を出た。

 円安などによる物価高の影響で、家電量販店の決算には既に陰りが出ている。ヤマダデンキを展開するヤマダホールディングス(HD)は、消費者の防衛意識の高まりなどによって家電の需要が減少。7日に発表した24年3月期連結決算の売上高は前期比0・5%減の1兆5920億円、最終(当期)利益は24・4%減の240億円と減収減益となった。

 ヤマダHDの長野毅・統合経営企画室長は、消費者の懐具合について「物価高などに費やされた分(家電に使われる分が)減った」と嘆いた。同業のノジマは増収減益だったが、田島穣取締役は「過度な円安は消費にとっては良くない」と語り、今後の為替動向に警戒感を示した。

 旅行会社にも懸念が広がっている。近畿日本ツーリストを傘下に持つKNT―CTHDでは、24年3月期の海外旅行の売り上げが、新型コロナウイルス禍前と比べ3~4割の回復にとどまった。為替に大きく左右される旅行需要について、米田昭正社長は「逃げ水を追うようだ」と悩ましげに言った。日本航空も、海外への観光客はコロナ禍前の半分程度にとどまり、斎藤祐二副社長は「今の為替水準では(需要の回復は)なかなか厳しい」と率直に述べた。

 円安による仕入れコストの増加も、業績を押し下げる方向に…

この記事は有料記事です。

残り1017文字(全文1793文字)

【時系列で見る】

関連記事

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月