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イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区の最南部ラファへの侵攻を巡り、事実上の同盟関係にある米国とイスラエルの亀裂が深まっている。バイデン米大統領が8日、兵器供与の停止に言及しながら侵攻断念を迫ったことに対し、イスラエル側は強く反発。ネタニヤフ首相は「単独でも戦う用意がある」と述べるなど、戦闘の先行きは見通せない。
「必要であれば、我々は爪だけでも戦うが、それよりはるかに多くのものを持っている」。ネタニヤフ氏は9日のビデオ声明で、改めてラファへの大規模侵攻に強い意欲を示した。イスラエル軍のハガリ報道官も「ラファでの作戦に必要な弾薬は確保できている」とし、米国の支援なしでも侵攻が可能だと強調した。
米国とイスラエルは長年緊密な関係にある。1948年にイスラエルが建国を宣言すると、米国は11分後に世界で初めて承認した。冷戦期は、ソ連とアラブ諸国の接近に対抗するため、米国は民主主義を掲げるイスラエルへの支援を本格化。79年にイランがイスラム革命を機に反米姿勢になると、米国のイスラエルへの支援はさらに強化された。
米国内では「イスラエル・ロビー」が活発に活動するほか、米国民の4分の1を占めるとされるキリスト教福音派も親イスラエルで、ユダヤ系の政治的な影響力は大きい。
イスラエルにとっても米国は極めて重要な後ろ盾だ。ストックホルム国際平和研究所によると、イスラエルが2019〜23年に外国から調達した武器の7割が米国製だった。米国は国連安全保障理事会でも、イスラエルの国際法違反を非難する決議案に常に拒否権を発動し、イスラエルを擁護してきた。
ただラファへの侵攻を巡っては、両国とも簡単には妥協できない事情がある。米国内ではガザ地区の人道状況の悪化に伴い、批判の矛先はバイデン政権にも向いている。11月に大統領選を控えるバイデン氏にとっては、さらに多くの市民が犠牲になりかねないラファへの大規模侵攻は許容できず、ネタニヤフ氏の説得を再三試みてきた。
イスラエルでは、ネタニヤフ氏率いる連立政権に極右政党が入っており、イスラム組織ハマスとの戦闘を継続しない限り、連立を離脱すると示唆している。昨年10月にハマスの越境攻撃を招いたことに対するネタニヤフ氏への批判も強く、戦闘を継続することで政権を維持している側面がある。イスラエルはハマスとの休戦交渉に圧力をかけるため、6日からラファで「限定的な」軍事作戦をすでに開始している。
「イスラエルの安全保障からは手を引かないが、人口密集地で戦争を行う能力は断つ」。バイデン氏は8日のインタビューで、ラファに侵攻した際の対応についてこう明言した。米国の不満が頂点に達しつつある中、イスラエルの対応が今後の焦点となる。【ワシントン松井聡、エルサレム松岡大地】
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