「内戦終わらせないと」 スーダン人元留学生、母国の立て直し訴え

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スーダンの情勢を語るゼインさん=北九州市小倉北区古船場町の市立商工貿易会館で2024年5月8日午後7時17分、井土映美撮影 拡大
スーダンの情勢を語るゼインさん=北九州市小倉北区古船場町の市立商工貿易会館で2024年5月8日午後7時17分、井土映美撮影

 内戦が続くアフリカ北東部スーダンからアラブ首長国連邦(UAE)のドバイへ避難しているゼイン・アルアブディーンさん(28)が8日来日し、北九州市小倉北区の北九州市立商工貿易会館で講演した。1年あまりの避難生活を経て「この内戦は絶対に終わらせないといけない」と訴えた。【井土映美】

 アフリカで医療支援活動などを続ける北九州市のNPO法人「ロシナンテス」がスーダンの情勢報告会を開き、ゼインさんを招いた。

 ゼインさんは少年時代、同法人がスーダンで実施したサッカースクールに生徒で参加。同法人の招待で2011年に来日したことで日本に関心を持ち12年から3年間、九州国際大付高(北九州市八幡東区)に留学した。帰国するとハルツーム大学で学び、卒業後は首都ハルツームでスポーツ店を経営していた。

 23年4月15日、政府軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の武力衝突が勃発した。その日のうちに従業員たちとハルツームから北へ10キロ以上離れた街へ3時間ほど走って逃げた。

 街の人に4日間泊めてもらった後、危険な地域を迂回(うかい)しながら2日間かけて家族と合流し、ハルツームから南東へ200キロほど離れた都市ワドメダニへ移った。再会した時には父が涙を流す姿を初めて目にしたという。

 内戦で、食料の流通が減り物価が高騰。わずかな食料を家族で分け合った。知人からゼインさんが経営していた複数の店舗のうちの一つが破壊されたと知らされた。国内にとどまることに危機感を持ったゼインさんは10月からドバイで出稼ぎし、国外へ避難する資金をためた。

 12月にスーダンへ戻ると、RSFがハルツームからワドメダニへ侵攻。妻子ら家族の命を守るため、故郷を離れ、ウガンダへ避難した。今は家族をウガンダに残し、単身ドバイで働いている。

 サッカー選手としてオリンピック代表候補になった経験もあるゼインさん。十字靱帯(じんたい)を断裂するけがをした時にスーダンでは治療できず、選手を続けることを諦めた経験から「スーダンの人のためにリハビリセンターを作りたい」と夢を語った。

 参加者から「内戦が終わったらどうする」と聞かれたゼインさんは「スーダンに戻る。強い意志でスーダンを立て直したい」と力強く答えた。

 ゼインさんとともに登壇した同法人の川原尚行理事長は「今こそ国際協調でスーダンを支援しなければならない」と訴えた。福岡県久留米市から講演を聞きに来た高校3年、平田紗弥子さん(17)は「紛争地域での生活は大変だと改めて分かった。将来は紛争地域などで医療関係の仕事をしたい」と語った。

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