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整形外科で受けられる「再生医療」はご存じですか? 種類・効果・リスクも医師が解説!

 更新日:2024/05/08

近年、再生医療に関する研究は目覚ましい勢いで進んでおり、様々な領域で成果を上げています。特に、整形外科の領域では自分の血液や細胞を使った再生医療もおこなわれており、プロのアスリートも多く実践しています。今回は、整形外科で受けられる再生医療の種類や効果などについて、「リペアセルクリニック東京院」の藤間先生に解説していただきました。

藤間 保晶

監修医師
藤間 保晶(リペアセルクリニック東京院)

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三重大学医学部医学科卒業。その後、奈良県立医科大学整形外科入局。奈良県立奈良病院(現・奈良県総合医療センター) 救命救急センター、済生会奈良病院整形外科、市立奈良病院整形外科、国立病院機構奈良医療センター整形外科などの医局関連病院を経て現職。現在も下肢機能再建を目指した手術執刀をおこなっている。日本再生医療学会代議員・再生医療認定医、日本膝関節学会評議員、日本スポーツ整形外科学会評議員、関西関節鏡・膝研究会幹事、日本整形外科学会専門医・認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。日本内科学会、日本糖尿病協会、日本脳神経外科学会、日本脊髄外科学会の各会員。

整形外科で受けられる再生医療とは? 種類・効果・メリットを解説

整形外科で受けられる再生医療とは? 種類・効果・メリットを解説

編集部編集部

まず、再生医療について教えてください。

藤間 保晶先生藤間先生

再生医療は、病気やケガで機能不全に陥った組織や臓器に対して、細胞や人工的な材料を併用して機能の修復・再生を図る医療のことを指します。簡単に言えば、「もともと人間に備わっている自然治癒力を最大限生かして、失われた機能を回復させる医療」です。

編集部編集部

再生医療では「幹細胞を使う」と聞きます。一体、幹細胞とはなんですか?

藤間 保晶先生藤間先生

わかりやすく説明すると、「色々な組織や臓器になれる未分化な細胞」のことです。幹細胞には、元来体内に存在している「体性幹細胞」、受精卵から作製される「ES細胞」、人工的に作製される「iPS細胞」の3種類があります。

編集部編集部

再生医療には、どのようなメリットがあるのですか?

藤間 保晶先生藤間先生

痛みの改善や組織の修復・再生などを期待できることが、メリットとして挙げられます。特に、薬剤などの治療法ではあまり効果が得られなかったケースでも、大きな効果を見込むことができるのは、再生医療のメリットと言えるでしょう。また、これまでは手術しか治療手段がなかった人でも、再生医療をおこなうことで手術をせずに済む場合もあります。

編集部編集部

そのほかにも、メリットはありますか?

藤間 保晶先生藤間先生

治療法にもよりますが、日帰りで処置が可能なこともありますし、入院が必要になることもありません。そのため、「とにかく忙しい」「長く家を空けられない」「今は手術を受けられない」「早期治癒を目指したい」といった悩みやニーズに適した治療法だと思います。

編集部編集部

再生医療には多くのメリットがあるのですね。

藤間 保晶先生藤間先生

そうですね。ほかにも、「患者さん自身の血液や組織(脂肪など)から製造するため、拒絶反応やアレルギーが起こりにくい」「安全性が高く、何度でも治療を受けることができる」「体への侵襲が低いため、高齢者などでも治療が受けられる」といったメリットもあります。

再生医療のデメリットやリスク、副作用

再生医療のデメリットやリスク、副作用

編集部編集部

具体的に整形外科の領域では、どのような再生医療がおこなわれているのですか?

藤間 保晶先生藤間先生

例えば、筋肉や靭帯、腱などが損傷を受けたときに、自分の血液中に含まれる血小板の働きを利用した「PRP療法(多血小板血漿療法)」があります。PRP療法は、関節の炎症や痛みを改善するのにも有効とされています。

編集部編集部

PRP療法はスポーツ選手などが多く受けている治療ですよね。

藤間 保晶先生藤間先生

はい。メジャーリーガーをはじめ、国内外で活躍するプロスポーツ選手も受けている治療として、広く注目を集めています。テニス肘、足底筋膜やアキレス腱をはじめとする筋腱の炎症などにも有効です。

編集部編集部

ほかに、整形外科の領域ではどのような再生医療がありますか?

藤間 保晶先生藤間先生

体(骨、関節内構造物、脂肪)から少量採取した細胞を使用し、骨や軟骨、腱、半月板などの修復・再生を促す幹細胞治療があります。

編集部編集部

再生医療にデメリットやリスクはないのですか?

藤間 保晶先生藤間先生

再生医療は副作用が少なく、非常に安全な治療法です。ただ、その一方で保険が適用されないため、治療費が高額になることがあります。また、比較的新しい治療法のため、現時点では治療データが乏しいという点はデメリットかもしれません。加えて、患者さん自身の幹細胞を使うことが多いので、治療効果には個人差があるのもデメリットと言えるでしょう。

整形外科における再生医療の今後の可能性とは? 早期復帰は可能?

整形外科における再生医療の今後の可能性とは? 早期復帰は可能?

編集部編集部

現在も再生医療の研究は進んでいるということですが、再生医療の今後の可能性について教えてください。

藤間 保晶先生藤間先生

再生医療は画期的な治療法として、日本のみならず世界中で研究が進められています。特に高齢化に伴い、増加の一途を辿る関節症にも有効です。また、低侵襲な治療を求めるスポーツ医療の分野でも、再生医療に対する期待がますます高まっています。

編集部編集部

新しい治療法も開発が進んでいるのですか?

藤間 保晶先生藤間先生

近年では医療技術の進化により、様々な治療法の開発が進んでいます。例えば、人間の細胞を培養して薄い膜(細胞シート)を作成し、患部に貼って細胞や臓器の修復・再生を促す治療も始まっています。また、軟骨を三次元的に培養し、それを欠損部に移植する治療も始まっており、既に大きな効果が得られています。さらに、幹細胞を特定の組織に分化するように、あらかじめ幹細胞に誘導を加える画期的な幹細胞治療の取り組みも進んでいます。

編集部編集部

再生医療の中でも特にPRP療法は「スポーツ選手が受けた」などのニュースで名前を聞く機会が多くなっています。

藤間 保晶先生藤間先生

はい。現在、PRP療法はドーピングにあたらないため、スポーツ選手も安心して受けることができます。ケガで戦線を離脱した場合、手術をすると復帰までには時間がかかります。重症例であれば手術が必要なケースもありますが、再生医療は切らなずに済むため、少ない負担でパフォーマンスの改善が期待できる魅力的な治療法です。そのため、スポーツ選手だけでなく、お仕事が休めない方やご高齢の方にも、PRP療法をはじめとした再生医療は期待されます。

編集部編集部

手術のようにメスを使わないので、体に負担が少ない点がいいですね。

藤間 保晶先生藤間先生

そうですね。治療後、スポーツ復帰にはリハビリが重要ですが、日常生活での制限は多くありません。副作用がなく、安全な治療法なので、膝、肩、股関節などの関節の痛み、足底筋膜やアキレス腱などの筋腱の炎症、スポーツ障害、変形性関節症などの疾患に悩んでいる場合は、ぜひ検討してほしいですね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

藤間 保晶先生藤間先生

再生医療は痛みや傷を治す手段として、現在、非常に注目を集めている治療法です。手術が不要であり、体への負担も少ないので、「手術を受けたくない」「介護、試験、育児、仕事などで、今は手術を受けることができない」「高齢で手術を受けるのに抵抗がある」「病気で手術が受けられない」などの理由で治療に迷っているのであれば、ぜひ治療手段の1つとして、ご検討いただければと思います。専門的な用語も多く、わかりにくい部分もあるかもしれませんが、再生医療を検討する際は、お気軽に医療機関へご相談ください。

編集部まとめ

現在、再生医療は整形外科のみならず、様々な医療分野で研究開発が進んでいます。少し前には「治らない」と言われた疾患や症状も、もしかしたら治癒の可能性が生まれているかもしれません。興味があれば、ぜひ、再生医療の治療実績が豊富な医療機関へ相談してみましょう。

医院情報

リペアセルクリニック東京院

リペアセルクリニック東京院
所在地 〒105-0022 東京都港区海岸1-16-1 ニューピア竹芝 サウスタワーPIER MALL 3F
アクセス ゆりかもめ「竹芝駅」 徒歩2分
JR「浜松町駅」 徒歩10分
診療科目 整形外科

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