「まさか追い出し部屋に」北海道大准教授 4平方mにたった1人

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「旧スタッフ」の男性准教授が作業する事務スペース。4平方メートルの広さしかない=札幌市北区で鳥井真平撮影
「旧スタッフ」の男性准教授が作業する事務スペース。4平方メートルの広さしかない=札幌市北区で鳥井真平撮影

 学生の指導ができなくなって、4年目の春が来た。

 北海道大理学研究院の化学部門に所属する50代の男性准教授は2021年4月から、たった1人で研究を続けている。同じ研究テーマに取り組む同僚や学生は周りにいない。

 関連記事は、以下のリンクからお読みいただけます。
 <前編>「まさか追い出し部屋に」北海道大准教授
 <後編>北海道大の教授会が「内部基準」作成
 <解説>北海道大の「旧スタッフ」冷遇、背景にある旧弊と財政難
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ノーベル賞出した名門で

 <2010年ノーベル化学賞ご受賞おめでとうございます>

 札幌市北区のキャンパスに建つ研究棟に、ノーベル賞を受賞した化学部門のOB、鈴木章名誉教授をたたえるポスターが張られている。その前を通り過ぎ、薄暗い階段を上り、男性は研究室にたどり着く。

 与えられた事務スペースは4平方メートル。机と椅子、書棚、ホワイトボードを置くと、大人2人がすれ違うのもやっとだ。ふと、20年12月の出来事を思い出す。

 「研究室から出て行って、部屋を空けてください。部門の決定なので従って」。当時の部門長から言い渡された言葉だという。

 この春、理学部の学生に配る化学部門のパンフレットが完成した。14の研究室を紹介した全8ページのどこを探しても、自分の名前はなかった。「まさか追い出し部屋に入れられるなんて。まるで幽霊だ」。男性は自嘲気味につぶやいた。

きっかけは教授の退職

 北大化学部門では教授と准教授、助教が一体で研究室を運営する「講座制」を採用している。教授が退職や転出をした場合、研究室は閉鎖されたり、後任の教授に引き継がれたりする。

 男性は任期のない准教授として14年に北大に着任した。19年3月、研究室の教授が定年退職し、後任教授が研究室を引き継いだ。当時の部門長らには「協力して一緒にやって」と言われ、研究室に残った。

 その春から新教授の下で研究を始め、大学院生4人の指導にも当たった。20年度は学部生も指導した。ところが20年9月、事態が変わる。

 部門のある教授から、研究室に新しい准教授と助教を迎えることになったと告げられ、こう言われたという。「場所がないので研究室にはいられないですよね」

 転出に向けた話し合いが始まると思いきや、同12月に「部門の決定」を言い渡された。今後「学生はつかない(指導させない)」とも。指導していた学生は「テーマは何でもいい。先生と研究をしたい」と慕ってくれたが、…

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