伊藤環境相が謝罪 被害者側「団体を愚弄して乱暴な運用された」

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水俣病被害者側の発言の途中でマイクを切ったことについて謝罪する伊藤信太郎環境相=東京都千代田区で2024年5月8日午後0時9分、山口智撮影
水俣病被害者側の発言の途中でマイクを切ったことについて謝罪する伊藤信太郎環境相=東京都千代田区で2024年5月8日午後0時9分、山口智撮影

 水俣病の患者・被害者らが1日に伊藤信太郎環境相と懇談した際、環境省職員が被害者側のマイクの音を発言中に切った問題で、伊藤環境相は8日午後、熊本県水俣市で患者団体の関係者と面会し、直接謝罪した。伊藤環境相は「心からおわび申し上げたい。今日はその謝罪に参った。今回のことを深く反省し、環境省全体として皆さまのお気持ちに沿えるよう環境行政を進めていくことを約束する」と述べ、深々と頭を下げた。これに対し、被害者側からは「環境省の歴史に消しがたい汚点を残した」と厳しい声が上がった。

 懇談で水俣病の認定基準を巡る問題点を指摘していた時にマイクを切られた水俣病被害市民の会の山下善寛代表(83)は、伊藤環境相の謝罪に対し「大臣が環境省職員を指導、監督していなかった責任は重大」と述べた。

 続いて伊藤環境相は別の場所で水俣病患者連合の松崎重光副会長(82)にも面会。松崎さんが水俣病と認定されないまま亡くなった妻への思いを語る途中で言葉を遮った対応を謝罪した。松崎さんは硬い表情を崩さず「落ち着いて話を聞いていただきたいと思っている」などと応じた。

水俣病の患者・被害者らと懇談した際に、環境省職員が被害者側のマイクの音を発言中に切った問題を受けて謝罪する伊藤信太郎環境相(中央)=熊本県水俣市で2024年5月8日午後5時14分、平川義之撮影
水俣病の患者・被害者らと懇談した際に、環境省職員が被害者側のマイクの音を発言中に切った問題を受けて謝罪する伊藤信太郎環境相(中央)=熊本県水俣市で2024年5月8日午後5時14分、平川義之撮影

 謝罪の場に同席した患者・被害者団体の関係者は「患者団体を愚弄(ぐろう)して非常に乱暴な運用が行われた」などと指摘。問題が起こった理由や伊藤環境相自身がどう考えているかを問う声が上がった。

 これに対し、伊藤環境相は「役所では『前例やスケジュール、法律でそうなっている』とばかり捉えがち」と釈明。「3分で厳しい水俣の状況を話すのは正直言って厳しいし、10分でも足りないと思う」とも述べ、慰霊式の日やそれ以外の日程も含めて、関係者の訴えを十分に聞く場を設けたいとの考えを示した。

 また、伊藤環境相は8日、対応が不適切だったとして、同省の和田篤也事務次官と神ノ田昌博環境保健部長に口頭で厳重注意した。

 懇談は、水俣病公式確認から68年となった1日、慰霊式の後に同市内で開かれた。八つの団体の代表がそれぞれ3分間の持ち時間で、伊藤環境相に国への要望を述べていた中、司会の職員は、持ち時間を超過した団体の発言中にマイクの音を切った。懇談直後に団体側の指摘を受けた同省側は「不手際だった」などと繰り返し、会場は一時紛糾した。同省特殊疾病対策室によると、持ち時間を超えた場合にマイク音を切るという方針を事前に決めていたという。ただ、懇談時に会場でそうした方針を説明するアナウンスはなかった。【西貴晴、中村敦茂、山口智】

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