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新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行してから8日で1年を迎えた。コロナ禍では宿泊・観光施設への休業要請や飲食店の営業時間短縮が続き、群馬県内の経済にも大きな打撃を与えた。5類移行後、経済活動は本格的に回復しつつあり、県内を代表する観光地の草津町では2023年度の入り込み客数が過去最多の約370万人を記録した。【日向梓】
草津温泉観光協会の副会長で、「草津スカイランドホテル栖風(せいふう)亭」の女将(おかみ)となって25年目の小林由美さん(65)は「一番大変だったのはコロナ禍」と振り返りつつ、最近は県内からの宿泊客が増えるなど、新たな兆しも感じている。
20年2月、横浜に入港したクルーズ船の集団感染を報じるニュースを見ながら「世界中が大変なことになっている」と思った。4月に埼玉県などに初の緊急事態宣言が出た時も、大型連休の予約はほぼ満室だったが、次第にキャンセルが出始めた。「おじいちゃんの古希のお祝いをどうしてもやりたい」という客の予約を受けつけた日の夜、県から休業要請が入った。約10組の予約客に断りの電話をすると納得してくれたが、「本当に申し訳なかった」。草津の旅館やホテルは次々と休業した。
国の観光支援策「GoToトラベル」や県の宿泊補助「愛郷ぐんまプロジェクト」で客足が一時的に戻っても、感染拡大のたびに休業する流れが続いた。休業中は「やることがないから、ずっと掃除をしてました」と苦笑する。
21年の売り上げは19年の半分に落ち込み、せっかくの客も「内緒で来ました」と罪悪感を抱えて訪れる場合も多かった。食事会場での仕切り設置や客室への案内取りやめなど感染予防策の一方、雇用調整助成金などの制度を活用し、従業員の給与を満額払い続けた。
それだけに、23年の5類移行は大きかった。「お客様も旅行しやすくなったと思うし、私たちも気分的に楽になった」という。5月の大型連休は満室で、例年は宿泊客が減る6~7月も予約が入り、同年の売り上げは19年並みに回復。さらに、以前は数%だった県内からの宿泊客が1割程度に増えた。県民向けの宿泊補助で「群馬のお客様が草津の魅力を再発見してくださったと思う」。
ホテルは23年に創業50周年を迎えた。「去年は何もできなかったので、今年は何かイベントをしたいですね」と言い、「お客様が安心して過ごせる環境を準備しているので、草津にどんどん来てほしい」と意気込む。
同町観光課によると、19年度の入り込み客数は約327万人で最多を記録したが、20年度は約194万人まで激減。その後、若者向けに景観を意識した街づくりも進め、23年度は19年度を約43万人上回り、最多を更新した。担当者は「5類移行で『観光してもよい』と考えられるようになり、追い風になった」と指摘する。
融資終了、倒産件数は高水準
新型コロナ対策で実施された実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)が終了し、群馬県内の企業倒産件数は高水準が続く。物価高や人手不足も影響し、帝国データバンク群馬支店によると4月の倒産件数(負債額1000万円以上)は13件で、7カ月連続で10件以上となった。リーマン・ショック後の2009年以来という。同支店情報担当の尺(せき)幸夫さんは「県内の中小企業にとって厳しい状況は続きそうだ」と話す。
19年の倒産件数は88件だったが、コロナ禍ではむしろゼロゼロ融資などが企業の資金繰りを強力に支え、20年83件▽21年67件▽22年70件――と抑えられた。
しかし、22年にゼロゼロ融資の新規受け付けが停止され、23年の件数は138件に急増。過去20年で最多だった09年の145件に次ぐ。尺さんは「23年からゼロゼロ融資の返済が本格化し、限界に達した企業や経営を諦める企業が増えているのではないか」と分析する。
5類移行で国内需要やインバウンド消費が回復し、観光事業者や飲食店などの業績は改善したが、一部にとどまる。円安による物価高は深刻で、トラック運転手の時間外労働の規制強化で人手不足が懸念される「2024年問題」の影響もあり、24年の倒産件数も高止まりする可能性が高いという。
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