栄華誇る井上尚弥、ドーム戦も通過点 大橋会長「新たな始まり」

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六回、ルイス・ネリ(手前)からダウンを奪い、TKO勝ちした井上尚弥=東京ドームで2024年5月6日、藤井達也撮影 拡大
六回、ルイス・ネリ(手前)からダウンを奪い、TKO勝ちした井上尚弥=東京ドームで2024年5月6日、藤井達也撮影

ボクシング 世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチ(6日・東京ドーム)

○井上尚弥(大橋)―ルイス・ネリ(メキシコ)●

 日本選手として「史上最大の一戦」こそ、井上尚弥の強さを示すのにふさわしい舞台だった。

 過去に体重超過などのトラブルを重ねた「悪童」ネリも形無し。勝者の井上の名を告げるコールが、東京ドーム全体に鳴り響いた。

 ドーム決戦は、所属する大橋ジムの大橋秀行会長にとっても思い入れが深い。大橋会長が現役時代に所属したヨネクラジムの会長、米倉健司さん(2023年死去)は東京ドームの前身・後楽園球場で1960年に世界戦を戦った。井上はいわば米倉さんの孫弟子だ。「天国から見守ってくれると思う」と恩師に思いをはせた。

 ただ、井上はどこまでも自らが置かれた状況を俯瞰(ふかん)していた。ビッグマッチの実現に気をもむ姿を見せまいと練習に足を運ぶのをためらった大橋会長には、こう声をかけたという。

 「会長が緊張していると、『やったるぞ』という気持ちになりますから、どんどん(そばに)いてください」

 井上にとっては、ドーム戦ですら通過点なのだ。試合前にこうも語っていた。「今年は3試合こなしたいなと思ってる。そこに向けてこの一戦も大事になる」。オイルマネーに沸くサウジアラビアからの高額の試合開催オファーが取り沙汰されるなど、王者は正に栄華を誇っている。

 この日の勝利は、井上が比類なき存在であることを、さらに揺るぎないものにした。大橋会長は「ここからが新たな始まり」と、一夜の夢にしないことの重要性も説く。

 あまりの強さに「井上のような選手が出てくるのは、なかなか難しい」という国内関係者の声があるのも事実。とはいえ、ボクシング興行の可能性を広げた一戦を井上しかできないと割り切るのはもったいない。無敗ロードをまい進する怪物の姿に、国内の他のボクサーは何を思うか。【岩壁峻】

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