vistlip、新宿BLAZEでのラストワンマンライブ開催――「最高に熱いライブをBLAZEに返せることが本当に幸せ」【公式レポート】

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vistlip

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vistlipが、[ENCORE:BLAZE SHOW DOWN]と題したワンマンライブを5月3日、新宿BLAZEにて行った。これが、2024年7月に閉館となる新宿BLAZEでvistlipが行う最後のワンマンライブである。

バンドにとって“ホーム”と呼べる、親しみ深いライブハウスの存在はとても大きい。もちろんvistlipにもそういった場所があり、すでに閉館してしまったZepp Tokyoも毎年周年ライブを行ってきた“約束の待ち合わせ場所”として重要なライブハウスの一つであったし、ワンマンライブやイベント出演を含めてかなりの本数を行ってきたこの新宿BLAZEも欠かせない場所の一つである。

智(Vo)

智(Vo)

「ついにこの会場でライブをするのが最後となってしまいました。今までありがとうございました。みんなもきっと数え切れない位きてくれたと思うんだけど、このvistlipとBLAZEの最後の瞬間をみんなと過ごせることをすごく嬉しく思います。……が! BLAZEなくなったら、vistlipどうすればいいんですかー⁉」――智

現在、楽屋の壁には多くのアーティストがサインと共に“ありがとう”という言葉を残しているのだが、vistlipは感謝を通り越して「どうすればいいんですか!?」と言ってしまう程には、大切な場所だったということが伺える。ただし、音楽とは切っても切れないライブハウスという存在は、何もバンドだけのものではない。同じ空間でその時々の空気感の元、音楽を共有してきたバンドのファンにとっても思い入れの深い場所なのである。そこで今回は、事前に「最後の新宿BLAZE公演で聴きたい曲」のアンケートを募り、それを基にセットリストが組まれていた。リクエストをしっかり反映していたからこそ、智は「すごく変わったセトリでしょ?」とMCで話していたが、そこにはこの会場で“聴きたい(演奏したい)曲”と“やるべき曲”が揃っていたようにも思う。ある意味、vistlipとファンとで用意した、新宿BLAZEへ贈る餞(はなむけ)ともいえるメニューと言っていいだろう。

Rui(Ba)

Rui(Ba)

[ライブはTohya作のSEから幕を開け、勢いを帯びた「My second B-day.」でのっけから一体感を帯びていった。やはりこの日印象的だったのは、アルバム『LAYOUT』(2015年3月)からの楽曲が多くセレクトされていたこと。おそらく、当時アルバムを引っ提げたツアー初日をここ新宿BLAZEで行い、その日(2015年4月24日)からvistlipとの歴史が始まったことが皆の記憶に残っていることも理由として挙げられるだろう。浮遊感から壮大なサビへと展開する「REM SLEEP」。インストゥルメンタル「To be awake is to be alive」から続いた「LAYOUT」では、アンダーグラウンドな空気を纏いつつもエモーショナルな側面も持ち合わせており、ラストで“喜びをあげたい”の後に“あなたに”という言葉を力強く添える場面もあった。後のMC中に「あの時とはバンドの雰囲気も少し違って、今だからこそできる「LAYOUT」だったりするのかな」と智が振り返っていたが、時の流れによって成熟したバンドの演奏や心情を投影したプレイは、懐かしさにも相まって胸を打つものがある。そして終盤には、一際ヘヴィに煽った「Good girl gone bed.」や本編を笑顔溢れる形で締めくくった「Idea」もまた、アルバム『LAYOUT』からのセレクトだった。

Yuh(Gt)

Yuh(Gt)

今回のようにファンのリクエストを軸にライブを構成する際には「なかなか自分たちじゃやらない曲に気付かせてくれる」と、メンバー基準でセットリストを組む時にはない発見があることにも触れていた。そして、「LAYOUT」と並んで「すごく“ココ”でやりたい曲だった」と話していたのが、歌詞の中に“新宿”の街並みを表す言葉が登場する「BLACK-TALE」。さらに、「BitterSweet Ending」と「アンサンブル」では、海が奏でるアコースティックギターがロックサウンドの中に人間味のある温かさをプラスするファインプレーを見せた。中でも、「BitterSweet Ending」の“君が目指したエンディング”という部分がやけに耳に残ったのは、新宿BLAZEでのラストライブで聴くこの日ならではのことだったようにも思える。こういった具合に、自分の中に飛び込んでくるフレーズや音に心を動かされる部分が“その時々”の状況や心情によって変わることもvistlipの音楽の魅力の一つとも言え、それによってvistlipを取り囲むものと――ファンやライブ会場とドラマを積み重ねてきた、とても情に厚いバンドであることを再認識できる場面でもあった。

Tohya(Dr)

Tohya(Dr)

終盤には、まさに新たな旅立ちにふさわしいと言わんばかりの「Dead Cherry」を始め、vistlipのライブでは定番でありながらも、先に触れたアルバム『LAYOUT』のツアー中にもしっかりと鎮座していた楽曲たちが控えていた。

……が、ラストスパートに差し掛かる前に、バスドラムのヘッドが破れるというハプニングが発生。ちょうどMCで「『LAYOUT』のツアーで、「My Second B-day」でペダルが外れて演奏中止したこともあった。あと、昔SHIBUYA BOXXでやった主催で「Dead Cherry」をミスって裏で大泣きしてた」とTohya自身が話していた矢先の出来事に、「持ってるな~」と思ってしまったのはここだけの話。「そんな若い頃もありましたね」と言ったYuhも「「LAYOUT」のアルペジオは緊張する」と話していたのだが、彼がフライングVを男らしく鳴らすところも魅力的でありつつも、抒情的なフレーズに合わせたギターソロも素晴らしく、例えばこの日演奏した「REM SLEEP」のクリーンな音色に思わず涙腺をやられて視界がにじむほどだったこともお伝えしておきたい。

Umi(Gt)

Umi(Gt)

こうして、ラストスパートは「HEART ch.」の白熱ぶりを受け継ぐように「LION HEART」へ突入すれば、海のラップパートはいつになく言葉を詰め込んでいる様子で、時折会場のあちらこちらを指さしていた様子からも彼なりの形で新宿BLAZEへ刻み込みたい気持ちを表していたようでもあった。そしてしっかりと「Idea」で本編を締めくくった後、止まないアンコールに応えて「彩」を披露。激しい楽曲では一層アグレッシブになる瑠伊が鳴らしたベースが合図となるようにヘッドバンキングが起こる場面や、観客が前へと詰めかける逆ダイブの応酬によって、この会場で最後の最後に見せた情景は実にライブハウス然としたものだった。

「今日も最高に熱いライブでした。今日というこの夜をBLAZEに返せることが本当に幸せです。絶対に、絶対にまたどこかで会おうな! BLAZEのスタッフさんも!」――智

最後の智の言葉に応えるようなタイミングで、会場の客電が一気に明るくなった。7月には、vistlipにとって大切なライブハウスがまた一つ幕を閉じることとなる。しかし、その同じ月の7月7日にvistlipは17周年を迎え、この日のライブで海とYuhのバースデーライブも発表されたように、バンドはこれからも続いていく。最初に“新宿BLAZEへ贈る餞(はなむけ)”と言ったが、もしかすると“これから”があるバンドにエールを送っていたのは会場の方かもしれない。この日の熱いライブの後に残ったのは、そんな温かな気持ちだった。

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