連載

公文書で巡る英国史

英国立公文書館には11世紀以降の貴重な資料が収蔵されています。古い文書や写真を基に、英国史の「裏側」に迫ります。

連載一覧

公文書で巡る英国史

チャーチルが示した「東欧分割案」とは? 戦後史を方向付けたメモ

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
ロンドンのパーラメントスクエアに建つチャーチル像=2023年3月20日、篠田航一撮影
ロンドンのパーラメントスクエアに建つチャーチル像=2023年3月20日、篠田航一撮影

 ロンドンの英国立公文書館が所蔵する歴史的資料は、デジタル版も含め約1100万点に上る。連載の最終回は、「英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱」(中公新書ラクレ)の著者で、同館の資料を調査し続けている在英ジャーナリストの小林恭子(ぎんこ)さん(65)に「興味深い」資料について語ってもらった。

 英国立公文書館の資料の中から見つけ出した英国史のエピソードを、全4回にわたってお届けします。
 1回目 電文に残るタイタニックからのSOS
 2回目 シェークスピアの遺言に残る謎
 3回目 架空の名探偵・ホームズへの捜査依頼
 4回目 チャーチルが渡した1枚の紙切れ

 「驚いたのは、チャーチルのメモです」

 数多くの資料を見てきた小林さんが特に忘れられないと語るのは、第二次大戦で英国を勝利に導いたチャーチル元首相が書いた1枚のメモだ。

 戦時中の1944年10月、モスクワを訪れたチャーチルは、当時のソ連(ロシア)共産党書記長のスターリンと会談した。チャーチルは当時、ナチス・ドイツが敗れた後の将来の欧州像について一つの懸念を抱いていた。「対ドイツ」では連携する英国とソ連だが、ドイツが勢力を失えば、ソ連の共産主義が戦…

この記事は有料記事です。

残り1352文字(全文1853文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月