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運輸業界に4月、時間外労働時間の上限規制が適用されるようになった。運転者の健康確保や安全などが目的だが、人口減少と高齢化が急速に進む中で「2024年問題」と呼ばれ、公共交通機関を担う人手不足は深刻さを増している。鉄道の赤字ローカル線を巡る議論やライドシェアの運用が本格的に始まるなど、新たな動きも活発化してきた。地域の足を今後どうしていくべきか、識者に聞いた。
岡村敏之・東洋大国際学部教授
――地方でも、既存の公共交通機関に代わる移動手段は普及するでしょうか。
◆デマンド型交通(予約制で相乗りの交通サービス)や有償運送などがあるが、車がない人をすべてタクシーで運ぶのと効率のうえでは変わらない。お客さんがいなくても運転手が待機していれば、利用者1人当たりのコストはタクシーと同程度以上かかる。平均2人ならうまく乗り合えている状況だが、平均5人を超えたらバスに乗せたほうがよい。ライドシェアも、手段が自家用車だからといって特に効率が良くなることはない。
他の選択肢が全くないならデマンド型などを導入するしかないが、一定の人口がある地方都市では今残っているバスを安易にライドシェアなどにすべきではない。その方法で運びきれるほど、客は少なくない。
――そんな地方都市の鉄道やバスの現状はどう見ていますか。
◆鉄道やバスの特徴は「まとまった人数を決まった場所から場所へ移動させる」こと。乗客1人当たりのコストが低く、交通手段を持たない人や外から来る人が気軽に使えて非常に効率的だ。ただし地方、特に過疎地はこの20年で人口が半分近くに減ったのに対し、鉄道やバスの利用者は減少した人口の数倍のペースで減っている。
人口もバスの利用者も3割減ってバスが廃止されたなら、それは地方切り捨てだ。一方で、例えば人口4割減に対してバスの乗客が10分の1になったのなら、切り捨てられたのはバスで、切り捨てたのは地域の利用者となる。まずは「不都合な真実」を受け止め、鉄道やバスが必要なら上手に使いこなして残していく工夫から始めなくてはならない。
――具体的に、どうすればよいのでしょう。
◆…
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