渡辺謙(64)と妻夫木聡(43)が主演するテレビ東京開局60周年特別企画ドラマスペシャル「生きとし生けるもの」(6日午後8時)の記者会見が5日、都内の同局で行われた。

人生に悩む主治医(妻夫木)と、余命宣告された患者(渡辺)が、バイクで旅をしながら「人は何のために生きるのか」を模索するロードムービー。渡辺、妻夫木のほか、共演の原田知世(56)杉野遥亮(28)大政絢(33)、脚本北川悦吏子氏(62)が登壇し、同局の祖父江里奈プロデューサーは「テレビ東京とは思えない素晴らしいキャスト」と恐縮した。

渡辺は作品について「ここまでストレートにえぐって死んでいく姿を、どうみとるかというのはなかなか描けない。テレ東さん、ありがとうっていう感じです」と語った。

脚本を手がけた北川からの猛アプローチで実現。昨年の5月からメールでやりとりを続けた。互いの思いの丈を伝え合った末、北川の熱意に渡辺が根負け。渡辺はこの日までに、当時のやりとりを読み返したといい「僕の思いと医療ドラマに対する気持ちを丁寧に書いたら、その3倍くらいの長さのメールが来て。もう1回メールを書いたら、リングのコーナーに追い詰められるようなメールが返ってきて。3回目でぼくはノックダウン。脅迫ですよね」と苦笑。断る選択肢を与えないと言っても過言ではないほどで「吹雪の中で出会った雪女みたい」と、当時の自身の心境をユーモアを交えて表現した。

北川は当初から渡辺を想定し、脚本を制作。余命3カ月の患者役としたのも、渡辺が89年に急性骨髄性白血病、16年に早期の胃がんを患った経験があったのも背景にあった。「謙さんも大きい病気やられていて、こういうお仕事イヤだろうなと思ったんですけど、私も嫌だから半分背負ってもらえませんか?って書きました」と回顧。「やっぱり本当に死を恐れたことのある人が演じた方が良いものになると、悪魔のような気持ちがありました」。

北川氏も国が指定する難病の「炎症性腸疾患」を経験。生と死をテーマとした作品は、北川が書きたい1本だった。生死と正面から向き合った経験をもつ渡辺と北川が実体験を持って表現している。渡辺は「演じているときに、ほとんど北川さんの気持ちを代弁してるような役。やると決めたからにはかなり踏み込みこんだ」と明かす。「生と死を扱っている話ではあるんですけど、ある種、風のようなドラマ。強風が吹いたりとかあるけど、恐らく最後は、心地よいそよ風のようなドラマになったんじゃないかな」と説得力を持って呼びかけた。