WEST.の中間淳太(36)と舞台を中心に活動する林翔太(34)を、時間を置かずに取材する機会があった。

絶好調でWEST.10周年を迎えた中間と、ミュージカルに水を得た林。同世代の2人は、スタートエンターテインメントの中ではグループとソロの対照的な立場にあるが、ともに20代半ばに大きな決断をしている。

ひと昔前なら20代までと言われた「アイドル寿命」は近年、飛躍的に伸びているが、それでも20代半ばを、進路を決める「最後の分岐点」と考える人は少なくないようだ。最近、転職の際に使われる「第二新卒」の年限にも不思議と近い。

10周年を振り返った中間は「WEST.としてデビューできたのは大学卒業の後ですから、やっぱり一番きつかったのはその直前ですかね。僕の母が同級生のお母さんから『淳太クンいつまでやるの? いつデビューするの?』なんて聞かれるんですよ。だから、あの頃は僕自身本気で就活することも考えていましたから」と振り返った。

卒業後も事務所に残ったもののグループ最年長の中間はあっという間に25歳。同年代や年下のグループに先を越される中、メンバーとともに事務所にCDデビューを直談判することになった。前代未聞の行動、決断だ。その思い切った行動によってデビューは成し遂げたが、その後も簡単にはいかなかった。

「直談判してようやくデビューできたグループですから、事務所の中にも僕らのことを知らない人がたくさんいたし、なかなか活動が広がらなかった」

そして、結成5年目。

「僕にとっては30代に入る節目だし、正直このまま進むべきかと悩みました。みんなにもそんな気持ちがあったんだと思います。グループの『色』をつけないと、メンバーみんなで考えました。結論としてその1年は『応援歌』で行こう! となったんですよ」

思いが通じたのか、バレーW杯のサポーターの仕事が舞い込み、これを機にWEST.はブレークする。直談判までした強い仲間意識が「応援歌」という強烈なカラーを生み出し、10周年に至ったと言える。

6年前「ロジャーズ/ハート」で初主演して以来、舞台俳優としての活躍で知られる林の場合は思いを貫くために、逆にジュニア時代のグループを抜けた。

「もともとはV6に憧れて事務所に入ったんですよ。ジュニアのままグループを組んで20代半ばになった時、30代で自分が立てるステージって何だろうって改めて考えた。振り返ってみると、よく舞台を見に行っていたんですね。『レ・ミゼラブル』には何回も行ったし、ミュージカルが大好きだった。真剣にそこに向き合おうと思ったけど、そうするとグループに迷惑かけちゃう気がしたんですね。で、メンバーに話して抜けることにしました。周りからは『何で?』とずいぶん言われましたけど、気持ちは変わらなかった」

「ロジャーズ-」は文字通り初のミュージカル、ピアノやタップダンスも初挑戦だった。

「客席暗転で、僕のピアノで舞台が始まるんです。初日の緊張といったらなかった。ここさえ乗り切れば後はこっちのものと言い聞かせてやりました。不思議とミスはなかったんです。実はジュニア時代にはKinKi Kidsさんのコンサートで、1日目は振りを間違え、2日目は衣装を間違え、ちゃんとできたのは3日目ということがありました。あの経験が身に染みているのかもしれません」

本人は照れくさそうに言うが、自身の決断で文字通りの「天職」を得たのだ。

いい形で30代半ばを迎えた2人だが、20代半ばの思い切った決断があったからこその「今」に違いない。