劇作家唐十郎(から・じゅうろう)さん(本名大鶴義英=おおつる・よしひで)が4日午後9時1分、急性硬膜下血腫のため、都内病院で亡くなった。84歳。1日に自宅で転倒し、救急搬送されたという。

唐さんの代表作の1つ「泥人魚」東京公演に備え、準備が進む中の訃報だった。5日午前、劇団唐組の久保井研(61)が、夜の初日公演前に、新宿・花園神社境内に設けられた紅テント前で取材に応じた。

久保井によると、唐さんが自宅で転倒したことを知ったのは、テント設営を終えた2日だった。ただ「準備して待っていれば唐さんは来てくれる」と回復を信じていた。

この日、唐さんの代表作の1つ「泥人魚」東京公演の初日公演が新宿・花園神社で行われ、劇団のファンらが数多く来場。唐さんの訃報を受けて来場した舞台関係者も多く、一般客と合わせて350人以上の観客が来場した。

この日の上演は、幕が開くと同時に大きな拍手に包まれた。上演後のあいさつでは、久保井が劇団員を代表し唐さんを悼んだ。「報告しなければならないことがあります。唐十郎が永い眠りに尽きました。見に来てもらえるのを楽しみにしていたけど、かないませんでした。今日は見に来てくれていると思います」。そう言葉にすると、場内は約20秒近く、万雷の拍手に包まれた。唐さんの長女の大鶴美仁音も舞台に立った。

最後は久保井が「まだ初日。またお会いしましょう」と気丈に観客に投げかけた。上演後は、多くのファンが名残惜しそうに、赤いテントを眺めていた。