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人口を奪い合っただけ?地方創生10年 変わる看板、変わらぬ衰退

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「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掲げる安倍晋三首相(右)と石破茂地方創生担当相=東京都千代田区で2014年9月5日午後1時29分、武市公孝撮影(代表撮影)
「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掲げる安倍晋三首相(右)と石破茂地方創生担当相=東京都千代田区で2014年9月5日午後1時29分、武市公孝撮影(代表撮影)

 2014年に政府が「地方創生」の取り組みを始めてから今年で10年を迎える。人口減少と東京一極集中の流れが是正される見通しは立たないが、岸田文雄首相が看板政策としてきた「デジタル田園都市国家構想(デジ田)」が今年の施政方針演説から消え、関係者の間に衝撃が走った。

 24年1月30日、首相は演説で「地方創生なくして、日本の発展はない」と強調した。一方で、首相就任以降、演説に盛り込まれてきた「デジ田」という文言は無くなっていた。

 首相が「デジタル技術を活用し、地方に仕事や人の流れを生み出す」と強調し、自動運転車の導入に交付金を出すなどしてきた「デジ田」に代わり、演説で新しく掲げたのは、地方の行政サービス低下などをデジタル技術で補う「デジタル行財政改革」だった。

 24年2月、自民党本部で開かれた党地方創生実行統合本部の会合で、本部長(当時)の林幹雄元経済産業相は「施政方針演説にはデジ田の言葉が無かった。これからデジタル行財政改革で地方創生を進めればいいのか。そうなれば(本部の)あり方を考えなくてはいけない」と、暗に政府の政策のぶれを批判した。

 「地方創生」は、元総務相の増田寛也氏(現・日本郵政社長)が座長を務めた民間団体「日本創成会議」が14年5月、全国896市区町村を「消滅可能性都市」として公表したことに端を発する。当時の安倍晋三政権は少子化を食い止め、東京一極集中を是正することを目指す「まち・ひと・しごと創生本部」の事務局を内閣官房に設置し、石破茂元幹事長を初代地方創生担当相に起用した。

 創生本部は、地方自治体に移住促進などを盛り込んだ計画づくりを競わせ、毎年1000億円超の交付金を配分した。だが、ある官邸関…

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