赤字ローカル線は「郷愁で残せ」 ある鉄道専門家の訴え

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福井県内で2路線を運行する第三セクターのえちぜん鉄道=福井市で2022年10月6日午後4時43分、井口彩撮影
福井県内で2路線を運行する第三セクターのえちぜん鉄道=福井市で2022年10月6日午後4時43分、井口彩撮影

 運輸業界に4月、時間外労働時間の上限規制が適用されるようになった。運転者の健康確保や安全などが目的だが、人口減少と高齢化が急速に進む中で「2024年問題」と呼ばれ、公共交通機関を担う人手不足は深刻さを増している。鉄道の赤字ローカル線を巡る議論やライドシェアの運用が本格的に始まるなど、新たな動きも活発化してきた。地域の足を今後どうしていくべきか、識者らに聞いた。

上岡直見・環境経済研究所代表

 ――採算性を考えると鉄道の赤字ローカル路線の存続は困難では。

 ◆「郷愁ではローカル路線は残せない」といわれる。しかし、特別な感情を抱けるからこそ残す価値がある。「ローカル線は郷愁で残せ」ということを強く主張したい。

 特に地域と共に歩んできた駅の役割は重要だ。福井県北部の第三セクター・えちぜん鉄道が評価されるのは、駅を町の拠点にしようと努力しているから。ところが鉄道各社は、駅の無人化を進めている。効率性だけで赤字路線の問題を議論することは間違いだ。

 ――とはいえ、特に地方では人口減少が急速に進んでいます。

 ◆だからこそ、駅の存在意義は大きい。北陸3県の1995年と2015年の国勢調査データを比較したところ、「駅の半径2キロ圏内の地域」は「駅のない地域」に比べ、人口の減少率が明らかに緩やかだった。確かに地方では駅周辺のシャッター街化が進んでいるが、車の運転が困難な高齢者らには歩いて暮らせる大切な生活拠点だ。廃線は住民の足を奪い、生活を脅かすことになりかねない。

 ――鉄道会社、自治体などはバスへの転換を模索しています。

 ◆利用者が増加に転じるとは思えない。運行本数が減り、さらに利用者が減るという負のスパイラルに陥りかねない。「2024年問題」による運転手不足も深刻で、結局はバス路線も維持できなくなるのでは。鉄道のバスへの転換は、公共交通機関が失われる最初のステップとなる。

 ――では鉄道路線をどうすれば維持できるのでしょうか。

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