神戸在日コリアンの生活と証言伝承 ミュージアム開設へCF開始

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「神戸在日コリアンくらしとことばのミュージアム」の開設を進める金信鏞さん=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時8分、栗田亨撮影 拡大
「神戸在日コリアンくらしとことばのミュージアム」の開設を進める金信鏞さん=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時8分、栗田亨撮影

 100年以上の歴史を持つ神戸の在日コリアンの生活を記録した写真や証言などの資料を後世に伝える「神戸在日コリアンくらしとことばのミュージアム」(神戸市長田区)が今秋の開設を目指して準備が進んでいる。建設資金への協力を呼び掛けるクラウドファンディング(CF)も始まっている。

 韓国・朝鮮籍の在日コリアンは市内に約1万4000人居住する。日本国籍を取得した人や、朝鮮半島にルーツを持つ親族を持つ人も含めるとさらに数は多い。中でも「靴のまち」と言われた長田には靴製造業が集積し、戦前には朝鮮半島から多くの在日コリアンが移り住んだ。戦後はケミカルシューズの一大生産地になり、地域にはコミュニティーが形成されてきた。

「神戸在日コリアンくらしとことばのミュージアム」に収蔵される、戦後間もない時期の長田地区の古物商が客との取引を記録した台帳=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時13分、栗田亨撮影 拡大
「神戸在日コリアンくらしとことばのミュージアム」に収蔵される、戦後間もない時期の長田地区の古物商が客との取引を記録した台帳=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時13分、栗田亨撮影

 ミュージアム構想を進めるのは、在日2世で一般社団法人「神戸コリア教育文化センター」代表の金信鏞(キム・シニョン)さん(71)。世代交代が進み、今は3、4世が増えて歴史の継承が課題となっていた。

 以前は盛んだった民族団体の活動も下火となっており、金さんは「ルーツを知りたい」「同胞と知り合いたい」という若い世代が集える場所として2014年、JR新長田駅近くにコミュニティーカフェを併設した同センターを設立。当事者や研究者らから歴史を学ぶセミナー「長田在日大学」や韓国との交流、若い世代によるシンポジウムなど多彩な事業を展開してきた。新長田で暮らす1、2世への聞き取りなどフィールドワークの拠点や韓国語教室の会場としても使われている。

 ミュージアムは10年前から構想していたが、22年に京都府宇治市に「ウトロ平和祈念館」、23年には大阪市生野区に「大阪コリアタウン歴史資料館」が相次いで開設されたことに触発され「自分たちにもできる」と決断した。

在日コリアンが住む1960年前後の神戸・長田などの写真が載った冊子=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時14分、栗田亨撮影 拡大
在日コリアンが住む1960年前後の神戸・長田などの写真が載った冊子=神戸市長田区で2024年4月11日午後2時14分、栗田亨撮影

 施設は、教育文化センターの建物を改修。1階に寄せられた古写真や生活用具などの資料の展示スペースとカフェ、2階に市民図書室を設け、セミナーなどの会場にする。これまでの活動で集まった1、2世のライフストーリーや3、4世の声の聞き取りを映像記録として公開し、図書室には数千冊に及ぶ韓国・朝鮮関連の書籍を置く。

 センターの活動は10年を迎え、ミュージアムは集大成となる。金さんは「在日コリアンの大きな歴史は本で知ることができるが、身近な歴史は街の中でしか学べない。これが最後の仕事です」と話している。

 CFの詳細はサイト(https://camp-fire.jp/projects/view/736879)で。5月末まで。【栗田亨】

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