「大東亜戦争」は決して使わない 「不適切」の二つの理由

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
東京・三宅坂の陸軍省記者クラブで日米開戦の発表文を読み上げる大本営陸軍報道部長の大平秀雄大佐=陸軍省で1941年12月8日撮影
東京・三宅坂の陸軍省記者クラブで日米開戦の発表文を読み上げる大本営陸軍報道部長の大平秀雄大佐=陸軍省で1941年12月8日撮影

 79年前の戦争が改めて注目されている。発端は4月5日、陸上自衛隊第32普通科連隊(さいたま市)が公式X(ツイッター)で、硫黄島(東京都小笠原村)の戦いに関連して「大東亜戦争最大の激戦地」と表記して投稿したことだ。「侵略戦争を正当化するのか」「当時の政府の閣議決定で認められている。何の問題もない」などと論争になった。

 政府は「大東亜戦争」という呼称を公式には使用していない。同連隊は8日、この表記を削除した。木原稔防衛相は9日の記者会見で「激戦の地であった状況を表現するため当時の呼称を用いた。その他の意図はなかったと部隊から報告を受けた」と説明した。

 大日本帝国(帝国)は米英などと戦争を始めた4日後の1941年12月12日の閣議で、37年から続いていた中国との戦争を含めて「大東亜戦争」と名付けることを決めた。敗戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は「大東亜戦争」の呼称が軍国主義と緊密に関連するなどの理由で公文書での使用を禁じた。52年のサンフランシスコ講和条約でその使用禁止は失効した。それゆえ今日、その呼称を使うのは自由だ。

 私は本紙で帝国の戦争に関する記事を1000件以上書いているが、「大東亜戦争」という呼称を使ったことはない(引用を除く)。GHQが禁じようが禁じまいが、使うべきではないと思っている。二つの意味で、不適切だと考えるからだ。

言葉に収まらない「戦域」

 まずは、…

この記事は有料記事です。

残り1315文字(全文1908文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月