サッカーのJ1湘南ベルマーレは2日、桐蔭横浜大4年のFW渡辺啓吾(21=旭川実高-札幌U-15)の来季新加入内定を発表した。同日付で大学所属のまま今季のJリーグ公式戦に出場できる「JFA・Jリーグ特別指定選手」としても承認された。

元日本代表FW中山雅史氏(56=現J3沼津監督)を目標に、プロ生活の第1歩を踏み出す。

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1度は遠くかすんだプロサッカー選手の夢を、FW渡辺がつかんだ。J1湘南に入団するストライカーは、「1日でも早くレモンガススタジアムのピッチに立ち、自分の特徴でもあるハードワークで湘南ベルマーレの勝利に貢献できるように全力で戦います」と力強くコメントした。

札幌U-15時代にスタメン起用された記憶はない。U-18昇格はかなわず、旭川実に進学した。高3の時、コロナ禍で半期開催となったプリンスリーグ北海道を無敗で優勝。来季札幌に入団するMF木戸柊摩(21=大体大)らのいた札幌U-18を下した時には「一緒に(札幌)U-15から旭川に行った5人と、うれし泣きした」という。

それでも当時は、裁縫や料理の腕を生かし「教育大学に行って、家庭科の先生になろうと思っていた」と話す。旭川実で参加したサッカーフェスティバルで桐蔭横浜大の関係者の目に留まって入学。部で一番下の4番目のチームからはい上がり、昨春から関東大学リーグ1部のトップチームに合流した。

「もやし」と呼ばれるほど細かった体格を、フィジカルトレーニングや得意の料理で増強。入学時に40キロでへこたれていたバーベルが80キロまで挙がるようになり「試合で倒されなくなった」(渡辺)という。昨秋のリーグ戦で、強豪・筑波大戦で1点、明大戦で2点を決めてJリーグ関係者から注目を集めると、3月のデンソー杯優勝、全日本大学選抜入りと、一気に階段を駆け上がった。

4月21日の天皇杯神奈川県代表決定戦準決勝のJ3YSCC横浜戦でも2-1の後半27分に、右からのクロスに反応。滑り込みながら右足を合わせ、5月12日の決勝戦進出に貢献した。陸上長距離の選手だった母譲りのスタミナで前線から相手ディフェンスを追い回すチェイシングと、クロスやこぼれ球を押し込む、泥くさいプレーが持ち味だ。「まだちっちゃいころ、札幌ドームで見たゴン中山さんの姿が忘れられない。ですから目標は中山選手です」と渡辺。“湘南のゴン”を目指し、プロ生活をスタートさせる。【中島洋尚】

◆旭川実の富居徹雄監督(52) 「ちゃんとやれ!」と言わなくても、ちゃんとやる選手。とにかくスタミナがあり、常にチームのために走ってくれた。総体がコロナで中止になった世代だが、その分しっかり体作りできたのが、今につながったと思う。教育実習で(旭川実に)戻ってくると聞いているので、後輩たちに良い影響を与えてほしい。

◆渡辺啓吾(わたなべ・けいご)2002年(平14)8月25日、札幌市生まれ。札幌厚別北小3年の時にリーヴFCでサッカーを始める。小4で札幌選抜。札幌U-15を経て旭川実。高3のプリンスリーグ北海道を無敗で優勝。桐蔭横浜大3年春にトップチーム昇格。今年3月の日韓定期戦全日本大学選抜メンバー。家族は両親と弟2人。185センチ、78キロ。