洗練されたウエディングドレスなどブライダルデザインの第一人者、桂由美(かつら・ゆみ)さん(本名・結城由美=ゆうき・ゆみ)が4月26日、死去した。94歳。東京都出身。婚礼衣装の主流が和服だった戦後日本にドレススタイルを提案、急速に普及するきっかけをつくった。葬儀は行わず、追悼ショー(しのぶ会)を後日開く予定。

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桂さんは、日本の女性たちにウエディングドレスで「夢」を届け、「ブライダルの伝道師」と呼ばれた。昭和、平成、令和と時代を超え、多くの芸能人、文化人らのドレスを手掛けてきた。全長2000メートルを超えるウエディングベールは世界最長としてギネス記録になった。今年3月にショーを開くなど、最晩年まで第一線で活躍した。

1964年(昭39)に、日本初のブライダルファッションデザイナーとして活動を開始。70年代には「1カ月の給料で買える」既製服のウエディングドレスを発表し、大きな反響を呼んだ。ユミカツラ・インターナショナルによると、65年に着用率わずか3%だったウエディングドレスは、現在では90%以上の花嫁が着用。日本女性の晴れ舞台に与えた、桂さんの功績は大きかった。裾を引きずる着物から発想した独創的な「ユミライン」などのデザインでも知られた。

03年からはパリ・オートクチュールコレクションに参加。元ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世に博多織の祭服をデザイン、アジア人で初めてイタリアファッション協会正会員となった。米誌で「世界が認めた日本人女性100人」に選ばれるなど海外でも活躍した。

昭和5年、東京・小岩生まれ。華やかな世界で躍動したその胸の奥には終生、戦時の悲惨な光景があったと、晩年に語っていた。都心の学校に通っていた中学生時代に終戦を迎えた。「おとぎ話」のようなドレスに憧れたのは、目を背けたくなる現実から遠くへと逃れるためだったという。

白雪姫やシンデレラなどがもともと好き。「お姫さま」になれるウエディングドレスは、まだ貧しい日本では遠い世界のものだったが、母親の経営する洋裁学校を手伝いながらパリに留学。自身の憧れを、一生の仕事として選んだ。そしてその道は、戦後日本の結婚式の風景を大きく変えることにつながった。