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「レビー小体型認知症の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も医師が解説!

 更新日:2024/04/26
「レビー小体型認知症の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も医師が解説!

レビー小体型認知症の原因とは?Medical DOC監修医がレビー小体型認知症の原因・症状・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

「レビー小体型認知症」とは?

レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで多い認知症で、厚生労働省の調査では全認知症の4.3%を占めるとされている認知症です。
認知症と聞くと、最近のことを忘れてしまう記憶障害を中心とした症状をイメージする方が多いと思いますが、これは最も多い認知症であるアルツハイマー型認知症の症状であり、レビー小体型認知症はやや異なります。レビー小体型認知症でも記憶障害が目立つことがありますが、小さな子供や亡くなった家族、小動物などが見えてしまったり(幻視)、注意力や実行機能が低下してマルチタスクが苦手になったりと、記憶障害以外の認知機能障害が目立つことが多く、動作が遅くなる、寝相が悪くなるなど、認知機能障害以外のさまざまな症状も出現します。
レビー小体型認知症はその他の認知症との合併が多く、診断が難しい病気で、生前にレビー小体型認知症と診断を受けるのは全認知症の4.3%にも関わらず、病理解剖では全認知症患者の20%程度でレビー小体型認知症と考えられる病理変化を認めるとの報告もあります。
今回は、このように意外と頻度の高い認知症であるレビー小体型認知症について解説します。

「認知症」と「レビー小体型認知症」の違い

認知症は記憶力に限らず、判断力、思考能力、情報処理能力などの機能の低下により、日常生活に支障が出ている状態を指す病名です。認知症はアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症など原因別に分類されており、その一つがレビー小体型認知症です。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、α-シニクレインとよばれる蛋白質が辺縁系や大脳皮質を中心に脳の細胞に異常に蓄積してしまい、神経細胞が失われることで発症するとされています。α-シニクレインが蓄積することで、神経内部にレビー小体と呼ばれる円形の異常構造物(封入体)が形成されることから、レビー小体型認知症と命名されました。
残念ながら、レビー小体型認知症ではα-シニクレインが蓄積する機序はまだよくわかっておりませんが、年齢や慢性的なストレス、うつ病、遺伝などさまざまな要因が関与すると考えられています。
レビー小体型認知症と同じくα-シニクレインの蓄積が関連するパーキンソン病では病的α-シニクレインが鼻や腸を介して脳に広がっていくdual-hit仮説が有力視されており、レビー小体型認知症でも研究が進むにつれて原因が判明してくると思われます。

年齢

病的な蛋白質が蓄積することで発症する病気であり、年齢を重ねるごとに症状が出やすくなります。55歳以上で発症することが多く、若年ではまず発症しません。同様の年齢の方に比べてできないことが多くなる、幻視が気になるようになってきたら病院を受診しましょう。

環境要因

頭部外傷や慢性的なストレス、うつ病などが発症に関与している可能性が指摘されています。また、一部の抗精神病薬が発症に関与するとの報告があります。

遺伝的な要因

SNCA、LRRK2、GBAなどの一部の遺伝子の多型が発症に関与している可能性が指摘されています。特定の遺伝子多型のある方では数倍~10倍程度発症率が増加するともいわれています。

レビー小体型認知症の主な症状

レビー小体型認知症の主な症状は注意力や遂行機能の低下とその症状の変動、繰り返し出現する具体的な幻視、レム睡眠行動異常、パーキンソニズム、起立性低血圧や便秘などの自律神経障害などです。またアルツハイマー型認知症、パーキンソン病、多系統萎縮症などその他の神経変性疾患との合併も多く、記憶力の低下が目立つ場合やパーキンソニズムが目立つ場合があります。

認知機能障害

認知機能としては記憶力の低下よりも注意力や遂行機能が低下することが多く、視空間認知障害もみられます。具体的には複数のことを並行して進めたり、効率的に物事を行ったりすることが困難となり、眼で見たものの形や構造の把握が困難となります。また、運転中に道に迷いやすくなり、GPSデバイスに依存しがちになります。これらの症状が時間や日によって大きく変動することも特徴です。

幻視

幻視とは実際に存在しない人や物が見えてしまう症状です。レビー小体型認知症では人や小動物などが比較的明瞭に見えていることが多く、本人は幻視について詳しく話すことができます。認知機能障害が進行する前から症状が出現するため、本人は幻視について自覚しており、幻視があることを隠してしまうことも少なくありません。
同じような幻視が繰り返し見られている場合には医療機関に相談しましょう。

レム睡眠行動異常

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠があります。レム(REM)とはRapid Eye Movementの略で、睡眠中の眼球運動に注目して睡眠の深さを分類したものですが、簡単に言えばノンレム睡眠は脳が休んでいる状態、レム睡眠では脳は活動しているが体が休んでいる状態です。夢はレム睡眠中にみています。普通の人は夢を見ている間も声を出したり、手足を動かしたりしませんが、レム睡眠行動異常症があると夢に合わせて大声を出す、手足を動かすなどの症状が出現するため、寝ている間にけがをしてしまったり、寝相が悪くなったなどの指摘を受けたりすることがあります。このレム睡眠行動異常はレビー小体型認知症やパーキンソン病のごく早期から出現することがあります。

パーキンソニズム

パーキンソニズムとは動作がゆっくりとなる(動作緩慢)、四肢・体幹の筋肉が固くなる(固縮)、手足が震える(振戦)、体のバランスを崩しやすくなる(姿勢反射障害)などのパーキンソン病と同様の症状です。レビー小体型認知症が進行すると高頻度で出現する症状で、動作が遅く、転倒しやすくなります。初期からパーキンソニズムが目立つ場合にはパーキンソン病認知症という別の分類の疾患である場合もあるため、数か月単位で急に動作が遅くなった、転倒が増えた場合には脳神経内科に受診をしましょう。

レビー小体型認知症になりやすい人の特徴

レビー小体型認知症はまだわかっていないことの多い疾患で、どのような人に多いのか、どのようにすれば予防ができるのか、わかっておりません。ここでは認知症が出現する前から現れる症状についてご紹介します。

便秘

便秘は自律神経障害がある場合によくみられる症状で、レビー小体型認知症やパーキンソン病、多系統萎縮症などの前駆症状の可能性があります。食物繊維を積極的に摂取するなどの食事の工夫や適度な運動、便秘薬の服用などで排便コントロールをしましょう。

寝相が悪い

主な症状として前述しましたが、認知症の症状の出現前からみられる代表的な症状の一つです。パーキンソン病の症状としても知られており、ベッドの周りの物に手や足をぶつけるなど睡眠中にけがをした、周囲の人から寝相が悪いと指摘された場合には注意が必要です。ベッドの周囲に物を置かないようにする、ベッド柵を利用する、布団で寝るなど睡眠中の安全確保を行いましょう。

ニオイがわかりにくい

レビー小体型認知症やパーキンソン病では早期から嗅覚障害がみられることもあります。自覚しにくい症状ですが、周囲の人ほど匂いが気にならない、コーヒーや香水などの匂いがよくわからないなどの症状がある場合には注意が必要です。

レビー小体型認知症の治療法

レビー小体型認知症は根本的な治療法は確立されておらず、それぞれの症状を緩和する治療が行われます。認知症の診療は主に脳神経内科と精神科のどちらでも行われますが、パーキンソニズムが目立つ場合には脳神経内科で、妄想や興奮が強い場合には精神科で診療を受ける方がよいなど、診療科ごとで得意不得意があります。
薬物治療では症状ごとに使用する薬剤が異なるため、症状別にご紹介いたします。

認知機能低下に対する治療

認知機能低下に対しては、アルツハイマー型認知症でも使用されるドネペジルやリバスチグミンが使用されます。嘔気/嘔吐や食欲不振などの消化器症状が出ることがあるため、少量から開始し、増量します。薬物療法による効果は限定的であるため、複数の用事を一度に頼まないなどの生活の工夫を交えつつ対応しましょう。

幻視・妄想に対する治療

幻視や妄想に対してはクエチアピンやオランザピン、抑肝散が使用されます。興奮は押さえられますが、これらの薬剤は活動意欲が低下したり、転倒のリスクを高めたりするため、使用には注意が必要です。また、レビー小体型認知症では不眠症などでよく使用されるベンゾジアゼピン系薬剤(ゾピクロンやフルニトラゼパムなど)は過度に効きすぎてしまう恐れがあり、可能な限り使用を避けましょう。
幻覚や妄想に対しては、介助者がすぐに否定をせずに理解を示すなど非薬物療法も非常に重要です。本人の話をしっかり聞き、安心感を与えるように心がけるとよいでしょう。

パーキンソニズムに対する治療

パーキンソニズムに対してはパーキンソン病にも使用されるドパミン製剤(レボドパ/カルビドパ)が有効です。またストレッチやバランス訓練などの理学療法も運動機能の維持や転倒予防に非常に有効であり、積極的にリハビリテーションに取り組むとよいでしょう。

レム睡眠行動異常

レム睡眠行動異常にはクロナゼパムが有効です。比較的少量でも有効であることが多いですが、傾眠やふらつき、倦怠感などの副作用があり、過量での使用に注意が必要です。また、睡眠中のけがを避けるために、布団で寝たり、入眠の際には周囲に物がないようにするとよいでしょう。

「レビー小体型認知症の原因」についてよくある質問

ここまでレビー小体型認知症の原因などを紹介しました。ここでは「レビー小体型認知症の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

レビー小体型認知症の平均余命はどれくらいですか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

レビー小体型認知症は比較的進行が早く、発症後3-4年でかなり認知機能低下が進行することが多く、7-10年で運動症状の悪化やそれによる骨折などで寝たきりになってしまうことが多いです。同様の症状でもパーキンソニズムが先行するパーキンソン病認知症では、認知機能低下の進行はゆっくりで、運動症状のコントロールも良好です。

レビー小体型認知症の初期症状について教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

レビー小体型認知症では、便秘や嗅覚障害、レム睡眠行動異常が認知機能障害の出現前にみられることが多いです。認知機能障害の早期では仕事が遅くなった、複数の仕事が同時にできなくなったなどの症状で気づかれることもあります。

編集部まとめ

レビー小体型認知症はまだまだわからないことが多く、発症の予防や発症後の治療も難しい疾患です。発症後の認知機能障害の進行が比較的早く、運動症状も出現することから、本人だけでなく、介助者の負担も大きいため、発症後は主治医ともよく相談して介護保険などの適切な社会保障サービスを利用しながら対応することが大切です。
アルツハイマー型認知症などその他の疾患とも合併し、診断が難しい場合も少なくないため、今回の記事をお読みいただき、この病気が疑わしいと思われる場合には認知症外来または脳神経内科への受診をお勧めいたします。

「レビー小体型認知症の原因」と関連する病気

「レビー小体型認知症の原因」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科の病気

精神科・心療内科の病気

レビー小体型認知症はその他の認知症との合併が多く診断が難しいと言われています。そのため、関連・類似する病気も多く考えられます。

「レビー小体型認知症の原因」と関連する症状

「レビー小体型認知症の原因」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 理解力が悪い
  • よく道に迷う
  • 動作が遅い
  • 寝相が悪い
  • 幻覚がある

便秘や嗅覚障害、レム睡眠行動異常が認知機能障害の出現前にみられることが多胃と言われています。仕事が遅くなったことや、複数の仕事を同時にできなくなったなどの症状で認知機能の低下に気づかれることもあります。

この記事の監修医師