共同親権導入が就学支援金に影響? 教育現場や当事者の懸念とは
- ポスト
- みんなのポストを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷
離婚後の父母双方に親権を認める共同親権の導入が、子どもの教育にも影響を与えるのではないかという懸念の声が上がっている。国が高校の授業料を無償化する就学支援金は「世帯年収910万円未満」の受給制限があり、離婚した親権者2人の年収が合算されて制限を超えた場合、受給できなくなる可能性があるためだ。文部科学省は「共同親権導入後も支援制度の仕組みは変わらない」と説明しているが、教育現場やひとり親家庭の不安は解消されていない。【西本紗保美】
教員「どちらの側に立てば……」
「子どもの視点に立つと、まずいのではないか。現場にも混乱を招くことになりそうだ」
神奈川県内の私立高校に勤める男性教諭(45)は、最近新聞で読んだ共同親権の導入により想定される高校無償化への影響について不安を抱いた。就学支援金の申請に教員も関わっているからだ。
まず就学支援金についておさらいしておく。国は2010年度から公立高校の授業料無償化を始め、14年度には世帯年収910万円未満とする所得制限を導入した。私立では20年度から年収590万円未満の世帯に39万6000円(全日制の場合)を補助している。
都道府県でも無償化拡充の動きがある。東京都では24年度から都立・私立の所得制限をなくし、大阪府も所得制限の段階的な撤廃を目指している。
文科省によると、国の現行制度では各家庭からの申請時に「親権者2人分」の収入状況の登録が必要になる。ただし、離婚や家庭内暴力(DV)、虐待などの事情で親権者に授業料の負担を求めることが難しい場合には、「各都道府県が柔軟に判断」し、「親権者1人分」で所得が計算されることになるという。
この男性教諭が勤務する私立高校では、多くの家庭が国の支援金や、神奈川県が所得などに応じて独自に支給する私立の「学費補助金」に頼っている状況だという。申請書類の処理は主に事務職員が担うが、申請がなかった場合は担任教諭が生徒や保護者と直接やりとりして家庭の状況を聞き取り、滞りなく支給されるよう手配しているという。
男性教諭が懸念するのは「(DVなどの事情がある場合も)両親の言い分が食い違い、…
この記事は有料記事です。
残り1673文字(全文2564文字)