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遺族年金、もらえないのは「夫だから」 妻亡くして知った「男女差別」

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労災保険の遺族年金を巡り、男女で異なる受給要件を定めている法律について「平等に扱ってほしい」と訴える原告の男性=東京都千代田区で2024年4月9日午後2時22分、菅野蘭撮影
労災保険の遺族年金を巡り、男女で異なる受給要件を定めている法律について「平等に扱ってほしい」と訴える原告の男性=東京都千代田区で2024年4月9日午後2時22分、菅野蘭撮影

 「受給資格者には該当しません」。窓口の職員にそう告げられ、男性はあっけにとられた。

 共に働き、共に家事を担ってきた妻を過労で亡くした。ところが、労働基準監督署で遺族のための年金を受け取れないと知らされた。

 理由は男性が妻を亡くした「夫」だから。夫を亡くした「妻」なら、受給できた。直面した「男女差別」に、男性は行動を起こした。

家計の不安で、死に向き合えず

 東京都内に住む男性(54)が妻と結婚したのは1997年。結婚すれば会社をやめる女性が多い時代だったが、妻は「結婚しても私は絶対、家にいない」と宣言していた。

 3人の子どもに恵まれた。「小学校の家庭科の成績は『1』だった」という男性も妻と家事を分担するようになり、ブロッコリーをゆでることに始まり、揚げ物もこなせるようになった。

 子育てが落ち着いてきた2017年、妻は昇進して役職に就いた。年収は妻が700万で、男性は500万円だった。

 妻の仕事は多忙を極め、帰宅が午前0時を回ることも珍しくなかった。19年6月、職場の懇親会中に倒れた。死因はくも膜下出血。51歳だった。

 「労災に違いない」。男性の直感通り、妻の死亡は後日、業務との因果関係が認定された。

 男性は、主に事業主が保険料を負担する労災保険制度に基づき、遺族年金の支給を求めた。認められれば、亡くなった人が生きていた時の平均賃金に応じて2カ月に1回、一定の金額が支給される。

 しかし、手続きのために訪れた労基署で、労働者災害補償保険法で定められている男女の要件の違いを伝えられた。

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