【ドーハ(カタール)佐藤成】日本がイラクを2-0と下し、8大会連続12度目のオリンピック(五輪)出場を決めた。パリ五輪アジア最終予選(3・5枠)を兼ねた大会で、前半にFW細谷真大(22=柏レイソル)と荒木遼太郎(22=FC東京)がゴールを奪い、決勝進出を果たした。5月3日の決勝では、インドネシアを2-0と下し、初の五輪切符を手にしたウズベキスタンと対戦する。

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パリへの道筋をつけたのは、目覚めたエースの細谷だった。

前半28分、主将のMF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)が最前線へ送った浮き球のパス。素早い動き出しからワントラップし、マークする相手選手をくるりとターンして外すと同時に右足でシュート。高度な技術と判断が合わさったプレーで、ゴール右隅にボールを流し込んだ。準々決勝のカタール戦の決勝点に続く2試合連続のゴールとなった。

続けて前半42分、左サイドでDF大畑歩夢(浦和レッズ)が粘り強くマイボールとすると中央の藤田へ。ワンタッチでスルーパスを通すと、荒木が右足インサイドでゴール右隅に流し込んだ。藤田の2アシストで前半のうちに2点をリードした。

一体感を武器に五輪切符をつかみ取った。

大会開幕前には、大岩ジャパン発足以来招集した86人という数字を示し、その代表のメンバー23人であることを強調した。大会中も1次リーグの3試合でフィールドプレーヤー全員を起用するなどして不満分子を作らなかった。

大岩剛監督は大会を通じて「23人全員で」と幾度となく口にし、総力戦で挑んでいることを際立たせた。

今回は国際Aマッチデー期間外で選手派遣義務がなく、海外クラブで活躍する久保建英(レアル・ソシエダード)、鈴木彩艶(シントトロイデン)ら主軸の招集が制限された。予選を突破できるのか-。世間のチームへの期待値は低く、膨らむ危機感。そこへの反骨心があった。

キーワードは「ファミリー」だった。

副主将の1人、DF内野貴史(デュッセルドルフ)は、キャプテンマークを巻いた韓国戦を前に「ロッカールームに戻ってきたら、たたく人なんていないし、全員ファミリーだから、またここに帰ってこられるからピッチに出たときに堂々とサッカーをしよう」とメンバーを鼓舞した。

韓国に0-1と敗れてグループ2位での突破。不発だった細谷ら攻撃陣には批判の目が向けられた。するとカタール戦を前に初めて選手だけでミーティングを開いた。

同じく副主将の山本理仁(シントトロイデン)は「国の代表で戦っているから悪いことも言われる。だけど、この中はファミリーだぞ、チームメート全員が1人1人を信頼しているし、そのキャラクターもおれらしかわからない。結局やるのはおれらだぞ」。改めて団結を確認し合った。

選手ミーティングは準決勝イラク戦前夜にも異例の2回目を実施。選手たちがまとまりの重要性を認識したからこそだった。さらには宿舎でムードメーカーのGK小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)が「人狼ゲーム」を恒例行事化し、ピッチ外での結束を強めた。あらゆる手段でチームは絆を深め、チームの一体感は高まった。

2-0で折り返したイラク戦の後半も、前半同様に細谷を中心に攻め立てた。19分には左サイドからチャンスメーカー、平河悠(FC町田ゼルビア)がエリア内に侵入して浮き球のパス。細谷がヘディングシュートを放つも右ポストに直撃した。また、右サイドから再三オーバーラップを仕掛けたDF関根大輝(柏レイソル)の存在感も際だった。

終盤は押し込まれる展開もあったが、GK小久保に高井幸大(川崎フロンターレ)と木村誠二(サガン鳥栖)のセンターバック2人を中心に、チームの集中力は切れない。フィジカルに優れる相手をハードワークで封じ込めた。

後半45分には、1次リーグ初戦の中国戦で退場処分となり批判にさらされたDF西尾隆矢(C大阪)も出場。五輪切符がかかる大一番もまた総力で戦い抜いた。

ライバル韓国が準々決勝でインドネシアに敗れる大混戦の大会にあって、大岩ジャパンは一戦ごとに成長し、パリ切符獲得という目的を果たした。

【U23日本代表】8大会連続12度目五輪決めた!細谷、荒木弾でイラク下し決勝進出/ライブ詳細