中国、福建省住民の台湾旅行再開へ　頼新政権の発足前に揺さぶり

　中国文化観光省は28日、台湾の対岸に位置する福建省住民の観光目的での台湾渡航を再開すると表明した。饒権次官が台湾の最大野党・国民党の立法委員（国会議員）の訪問団と北京で会談し、伝えた。「台湾独立派」とみなす民進党の頼清徳政権が5月20日に発足するのを前に揺さぶりをかけた格好だ。

　中国国営中央テレビによると、まずは福建省沖にある台湾の離島、馬祖（ばそ）島への福建省住民の旅行を再開。同省福州市平潭（へいたん）と台湾本島を結ぶフェリーを復活させ、福建省から台湾全体への団体旅行も再開するという。再開時期は示していない。

　中国は民進党の蔡英文政権との対話を拒否し、2019年から中国人による台湾への個人旅行を認めなくなった。20年には新型コロナウイルスの流行を理由に団体旅行も禁止した。

　中国税関総署幹部も28日に訪問団と面会し、台湾産のザボンなど農水産品の輸入再開を明らかにした。

　国民党立法委員17人からなる訪問団は26日から北京を訪問。27日には中国共産党序列第4位の王滬寧（おう・こねい）・人民政治協商会議主席と会談した。王氏は台湾独立反対と中台交流の重要性を伝えた。訪問団を率いる国民党の立法委員団長、傅崐萁（ふ・こんき）氏は中国人による台湾観光再開への期待を述べた。

　国民党による訪中については、傅氏の選挙区である東部・花蓮県が3日の地震で大きな被害を受けたことから、民進党が復興を優先させるべきだと批判していた。【台北・林哲平】