【ドーハ27日(日本時間28日)=佐藤成】日本は4試合ぶりに23人全員そろってパリ五輪切符が懸かる大一番に臨む。29日にパリ五輪アジア最終予選兼U-23アジア杯カタール大会準決勝でイラクと対戦。1次リーグ初戦中国戦で肘打ち行為によるレッドカードで3試合の出場停止処分が下ったDF西尾隆矢(22=C大阪)が出場可能になる。先発の可能性もありそうだ。2年前の立ち上げから主軸としてチームを支えてきたファイターが感謝の思いをピッチで表現する。

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ようやくピッチに戻ってくる西尾は、約7分間の取材で5回、「感謝」という言葉を口にした。出場停止処分が明けて準決勝から出場可能になり「本当に感謝。メンバーの仲間プラス、やはりスタッフ、監督、コーチ全員に本当に感謝ということだけだと思います」。この舞台まで連れて来てくれた仲間への思いがあふれた。

「リュウヤのために」。3試合の出場停止が決まってから、選手たちの合言葉でもあった。ロッカーには3番のユニホームが飾られた。初戦での一発退場後、急きょ出番が回ってきたDF木村はここまで2得点。19歳高井は抜群の安定感を示し、鈴木も3試合に出場。自身の穴を埋めるCBの活躍に奮起した。「みんながああやって必死になって戦ってくれているので、感動というか、こみ上げてくるものもたくさんありました」。

罪悪感に押しつぶされなかったのは、仲間の存在があったからだ。退場した中国戦後に皆の前で神妙に謝ると、チームメートは「うあ~~」と笑いに変えて受け入れてくれた。準々決勝カタール戦後には「おかえり」と声をかけられた。敗れた韓国戦後に選手だけで行ったミーティングでは、「あらためて1人じゃないということもすごく感じた。こういう仲間がいるからこそやっていける」と実体験から仲間の重要性を伝えた。

勝てばパリ五輪出場が決まる大一番。悔しさとともに恩返しの思いでプレーする。「立ち上がりをすんなりと入れれば必ず勝てると思う」。全体練習後に居残りでクロス対応などを黙々と繰り返すなどコンディションはバッチリ。帰ってきた副主将が日本を8大会連続の五輪出場に導く。