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「舌がんの末期症状」はご存知ですか?治療法や生存率も解説!医師が監修!

 更新日:2024/04/26
「舌がんの末期症状」はご存知ですか?治療法や生存率も解説!医師が監修!

舌がんは患者さん自身が確認できるがんでありながら、口内炎に似ていることから放置されやすい疾患です。そのため、受診時にはすでに末期の場合もあります。

末期の舌がんに対処するには、症状をよく知っておくことが重要です。初期症状とどのように違うのか把握すれば、治療を行いやすくなるでしょう。

この記事では舌がん末期にみられる症状を解説します。末期でも生活を楽しむためにできる治療法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

熊谷 靖司

監修歯科医師
熊谷 靖司(歯科医師)

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熊谷歯科医院 院長

舌がんとは

口腔がんの1つで、舌にがん細胞が発生する舌がんはほかの臓器のがんほど詳しく知られていません。どのような疾患なのか、舌がんの特徴についてご紹介します。

主な症状

舌がんでは主に舌可動部の縁にがん細胞が発生します。
症状としては舌の異常感・腫脹・ただれ・疼痛を訴える患者さんが多いです。また患者さんの中には、触れると硬いしこりを感じる方もいます。
とはいえ、これらの症状は口内炎と非常に似ているため、口内炎と間違えて放置されやすい傾向が強いです。口内炎がなかなか治らず受診したところ、舌がんと診断されるケースが多くみられます。

患者数と好発年齢

毎年、3,000人を超える方が舌がんと診断されます。
2018年に舌がんと診断された患者さんは全国で5,418人です。同年の全がん罹患患者数が980,856人だったことをふまえると、がん患者さんの中で舌がんを発症する割合は1%未満であると分かります。
しかし患者数でみると決して少ない数ではありません。好発年齢は60代ですが、女性では40〜50代の患者さんも多くいます。さらに20代の若年層で発症する症例もあり、若い方も注意が必要です。

舌がん末期にみられる症状

小さなストレスでも口腔内は荒れやすく、大きな異変を感じて受診したときにはすでに末期まで舌がんが進行していることがあります。
ここからは主な3つの末期症状を解説します。

食事や会話が困難になる

舌は食事をするための咀嚼・嚥下運動の補助機能、また会話するための構音機能を持つ重要な器官です。
舌がんが進行し舌の大部分ががんに侵されると舌の動きが鈍くなるため、これらの役割を果たすのが難しくなります。
舌だけでなく、口全体が動かしにくくなってくるでしょう。また持続した痛み・出血によって、食事・会話に強い不快感を覚える患者さんもいます。
食事・会話はQOL(生活の質)に関わる分野であり、結果的に精神面にも影響を与えるといえます。

リンパ節などへの転移

ステージ4の舌がんは舌の深部にまで広がっており、リンパ節・周辺臓器への転移がみられるケースが多いです。
舌がんは特にリンパ節へ転移する頻度が高いという特徴があります。舌がん自体は治療で制御したものの、転移によって最悪の結果に至る症例もしばしば見受けられます。
転移は早い段階から起こり急速に進行する可能性があるため、転移の有無は予後を大きく左右する重要なポイントです。

全身症状

舌がんは舌の疾患ですが、舌だけに症状が出るわけではありません。
まず舌・顔周辺の症状として声が変化したり顔面が変形したりする場合があります。また、食事ができないことによる体重減少、舌の動きが制限されることによる呼吸困難も生じやすくなるでしょう。
さらに高カルシウム血症を引き起こし、浮腫・疲労感・意識障害を自覚する患者さんもいます。このように症状が全身に及んでいる場合は、非常に危険な状態です。

舌がん末期の治療法

末期のがんと診断されると、死を待つほかないと考える方は多いでしょう。しかしすぐにあきらめる必要はありません。
舌がん末期の患者さんに対しても行える5つの治療法を取り上げます。

舌(亜)全摘出術

ステージ4では舌の広範囲にがんが広がっています。そのため、舌の半分以上を切除する舌亜全摘出術、もしくは舌を全て切除する舌全摘出術を行うのが一般的です。
多く用いられるpull-through(プル・スルー)法では、前方から切除を進めた後に舌を頸部へ引っ張り下ろして舌根部分の切除を進めます。そうすることで、浸潤がない部分を温存しながら適切に切除を行えるのがメリットです。
とはいえ舌を半分以上切除すると舌の機能が維持できなくなるので、がんの切除と合わせて遊離組織移植による再建手術が施行されます。

頸部郭清術

頸部リンパ節への転移が認められる場合には、頸部郭清術を行います。これは郭清範囲内に存在する胸鎖乳突筋・内頸静脈・副神経を含め、郭清組織を一塊として摘出する根治的手術です。
進行状態によって全頸部組織を摘出する全頸部郭清術と、その一部を省略する選択的頸部郭清術から選択し治療を行います。術後のQOLの面では神経・筋肉などの非リンパ組織は温存が望ましいものの、再発を防止するために術式の選択が重要となります。

放射線療法

舌がん末期では手術による治療が必須です。しかし手術のみでは転移・再発が起こる可能性が高いことから、術後補助治療として放射線療法が広く用いられています。
放射線療法は針・管をがん組織もしくは周辺組織に直接挿入して照射する組織内照射と、体の外から放射線を当てる外照射の2種類があります。局所に集中的な治療を行えることから、舌がんでは組織内照射がより有効です。

化学療法

手術でがんが取り切れなかった場合、または再発リスクが高い場合には放射線療法と併用して化学療法(抗がん剤)を行うこともあります。
化学療法で主に用いられるのはシスプラチンで、がん細胞のDNAと結合し抗腫瘍効果を発揮する薬剤です。一般的に60〜100mg/㎡を1日1回、3〜4週間ごとに投与します。

緩和ケア・支持療法

QOLの維持・向上を目的として、患者さんとその家族が感じる心身の苦痛を和らげるために取り入れられるのが緩和ケアです。舌がんと診断された直後から、必要に応じて適宜受けることが可能です。
またがん及び治療に伴う副作用・合併症・後遺症が引き起こす症状の予防・治療として、支持療法が行われることもあります。患者さんが診断から治療後まで自分らしく過ごすために大切なケアです。

舌がん末期の生存率

舌がんで末期のステージ4である場合、5年生存率は約50%と報告されています。一方、ステージ1の段階で治療を行えた場合の5年生存率は約95%であり、早期発見の重要性は明白です。
末期の生存率が低くなるのは、リンパ節への転移・局所再発が起こりやすいためです。状態を悪化させないためには、手術後も継続的な術後補助治療によって転移・再発を防止する必要があります。

末期の舌がんについてよくある質問

ここまで舌がんの末期にみられる症状・治療法・生存率などを紹介しました。ここでは「舌がんの末期」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

舌を摘出しても食事や会話はできますか?

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

ステージ4まで進行していると舌の大部分を切除するため、以前と同じように生活できるとはいえません。とはいえ術後のリハビリを行っていけば、多少の工夫は必要でも違和感なく食事・会話を楽しめる患者さんが多くいます。ただし、舌全摘出術を行った患者さんは重度の嚥下・構音障害を呈す場合もあります。QOLを維持するためにも早い治療が重要です

舌がんをなるべく早く発見する方法を教えてください。

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

舌がんの発見で重要な点は、定期的に自身でセルフチェックを行うことです。ぜひ歯磨きをするときに舌の状態を確認することを習慣にしてください。口内炎のような炎症がある場合は、固いしこりがないか、2週間以上治らず悪化していないかなどをチェックすると良いでしょう。さらに3ヶ月に1回は歯科医院を受診し、歯のチェックとともに舌・粘膜の状態を診てもらうことも大切です。目に見える部位だからこそ、日頃からよく気を配るようにしてください。

編集部まとめ

この記事では舌がん末期について、症状・治療法を中心に解説しました。全てのがんの中では症例が少ないものの、軽く見ていると最悪の状況になる恐れがあります。

舌がんに対処するためにまず重要なのは早期発見・早期治療です。日頃から口腔内のチェックを習慣にし、違和感を覚えたら早めの受診を心がけましょう。

もし末期まで舌がんが進行しているとしても、あきらめてはいけません。前向きな気持ちを保ち適切な治療を行うことが、病気に打ち勝つ最善の方法だからです。

舌がんと関連する病気

「舌がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

口腔内は傷つきやすく炎症が起きやすいため、舌の病気を発症しても単なる口内炎で片づけてしまう方が多いです。しかし放置すると、口腔内のみならず全身へと影響が大きく広がることもあります。舌の病気について理解を深めることは大切です。

舌がんと関連する症状

「舌がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 口内炎が治りにくい
  • 舌にただれ・しこりがある
  • 舌に異常感・疼痛がある

基本的に口内炎をはじめとする口腔内の炎症は、長くても2週間程度で治ります。一方、舌がんは進行性の疾患であり、一度発症すると治療を行うまで炎症は止まりません。長引く異変に気づいたら、自己判断せずに受診するのが望ましいです。

この記事の監修歯科医師