「バッハの上を目指す」 ジャズ界の旗手が神に与えられしもの

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自作の曲でファンを熱狂させているジャズベーシストのアビシャイ・コーエンさん=東京都港区で2024年4月16日、宮本明登撮影
自作の曲でファンを熱狂させているジャズベーシストのアビシャイ・コーエンさん=東京都港区で2024年4月16日、宮本明登撮影

 ジャズ界をリードするイスラエル出身のベーシスト、アビシャイ・コーエンさん(54)は毎年のように来日し、自作の曲でファンを熱狂させている。その音楽はグルーブ感にあふれるが、楽譜に書き起こすと数学的で複雑な側面も……。記者には「まるでバッハのようだ」と感じる部分もあった。インタビューでは偉大な作曲家への思いと共に「バッハの上を目指したいです」という言葉が飛び出した。真意を突き詰めると、コーエンさんが「神のような大きな存在から与えられた」と感じているものが浮き彫りになった。ジャズのイメージを覆す意外な素顔ものぞかせた。

 1970年生まれのコーエンさんは、10代の頃に家族とともに過ごした米国で、エレクトリックベースの革命児、ジャコ・パストリアス(51~87年)の音楽に出合い、ベースに魅了された。その後、イスラエルの音楽学校でベースを学び、92年に再び渡米。だが、キャリアのスタートは厳しく、路上での演奏や建設現場で働いて生計を立てた。

 転機が訪れたのは97年、世界的ジャズピアニストのチック・コリア(1941~2021年)に見いだされた。コリアの「ニュートリオ」のメンバーとしての活動がコーエンさんの名をジャズ界にとどろかせた。現在に至るまで編成やメンバー、共演者を替えながらコンスタントに自身名義のアルバムを発表している。

信頼関係が生むスリリングな演奏

 24年春には若手ミュージシャンとトリオを組んで来日し、ブルーノート東京(東京都港区)など3会場を巡る日本ツアーを行った。コーエンさんがパートナーに選んだのはイスラエル出身の新鋭2人だ。ピアノは96年生まれのガイ・モスコビッチさん、ドラムスは00年生まれのロニ・カスピさん。既にこのトリオで新たなアルバムを録音し終えているといい、ライブでは新作と旧作を織り交ぜながらスリリングな演奏を繰り広げた。

 これまで多くの音楽家と共演を重ねてきたが、その根本には「信頼がなくてはならない」とコーエンさんは強調する。今回のトリオで起用した若い2人の演奏を聴けば、コーエンさんがいかに信頼を置いているか、…

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