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頭痛を起こさせない「予防薬」はご存じですか? ひどい人は軽く、軽い人はついに卒業!?

 更新日:2024/04/26
頭痛を起こさない「予防薬」はご存じですか? ひどい人は軽く、軽い人はついに!?

頭痛に関する研究は急速に進んでおり、近年では新しい治療薬も次々と登場しています。しかし、頭痛が起きてから治すのではなく、頭痛を起こさないようにすることはできるのでしょうか? 頭痛を起こさせないといわれる予防薬について、井土ヶ谷脳神経外科・内科 頭痛・めまい・しびれクリニックの宮崎先生に教えてもらいました。

宮崎 良平

監修医師
宮崎 良平(井土ヶ谷脳神経外科・内科 頭痛・めまい・しびれクリニック)

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平成23年福島県立医科大学医学部卒業。平成25年横浜市立大学脳神経外科学教室に入局、同年横須賀共済病院で後期研修開始。横浜市立大学附属市民総合医療センター脳神経外科/救急救命センター、神奈川県立こども医療センター脳神経外科、横浜市立大学附属病院脳神経外科を経て、平成30年横浜市立大学大学院 医学研究科博士課程入学。基礎研究を行いながら、在宅クリニックでの診療経験、内科外来でのトレーニング、漢方診療経験を積む。令和3年まこと在宅クリニック神奈川県央開院、令和5年 井土ヶ谷脳神経外科・内科 頭痛・めまい・しびれクリニック開院。

頭痛は予防することができるのか?

頭痛は予防することができるのか?

編集部編集部

頭痛はどのようにして治療するのでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

頭痛には、頭痛自体が疾患である「一次性頭痛」(片頭痛や緊張頭痛、群発頭痛)と、ほかの病気の症状として生じている「二次性頭痛」(脳出血、脳梗塞、脳腫瘍などが原因のもの)の2種類があります。それぞれによって治療法は異なり、二次性頭痛の場合には原因となっている疾患を治療することで、頭痛を改善することができます。

編集部編集部

一次性頭痛の場合には?

宮崎 良平先生宮崎先生

一次性頭痛の大半は緊張型頭痛や片頭痛です。最近の疫学調査によれば、日本における有病率は、片頭痛が人口の5〜10%、緊張型頭痛が人口の約20%であると報告されています。つまり、日本人の4人に1人は何らかの頭痛に悩まされているという計算になります。

編集部編集部

どのような頭痛は治療することができるのでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

特に、片頭痛や群発頭痛は治療薬を使用することで症状が明らかに改善したり、頭痛の頻度を減らしたりすることができます。近年では頭痛に関する研究が進み、新しい頭痛薬も次々登場しているので、それらを利用することで大幅な症状の改善が期待できます。

編集部編集部

頭痛を治すのではなく、頭痛を予防することもできるのですか?

宮崎 良平先生宮崎先生

はい。特に片頭痛には予防薬が開発されており、それを用いることで症状を予防することができます。そもそも痛み止めなどによる治療は根本的な解決策ではなく、対症療法に過ぎません。そのため近年では、治療よりも予防の方が重視される傾向にあります。

頭痛予防薬の種類

頭痛予防薬の種類

編集部編集部

たとえばどのような予防薬があるのでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

予防薬にはさまざまな薬剤があります。たとえば三環系抗うつ薬と言われるアミトリプチリンやβ-ブロッカーのインデラル、てんかんの薬として使われてきた抗けいれん剤のデパケン、カルシウム拮抗薬の一種であるミグシスなどが代表的です。

編集部編集部

どのようにして使い分けるのですか?

宮崎 良平先生宮崎先生

慢性頭痛の診療ガイドラインでは、薬剤の効果の高さに応じてグレードが分けられています。それらを考慮しつつ、頭痛の症状に合わせ、最適な薬剤を選択します。

編集部編集部

予防薬を飲むと、完全に頭痛を予防することができるのですか?

宮崎 良平先生宮崎先生

なかには、完全に頭痛が治る人もいますが、個人差があります。しかし予防薬の目的は、「痛みが出現するのをゼロにする」のではなく、「痛みのない日を少しでも増やす」と考えれば、その効果は十分期待できると思います。

編集部編集部

それはどういうことでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

痛みを波に置き換えるとわかりやすいと思います。頭痛の程度がひどい人は波が高く、頭痛が軽症の人は波が低いと思ってください。予防薬を使用するとその波が次第に低くなり、軽症の人であればフラットになる、つまり、頭痛がなくなることもあります。

編集部編集部

もともと重症だった人でも、波が次第に低くなる効果が期待できるのですね。

宮崎 良平先生宮崎先生

そうです。治療を続けるうちに、やがて波が出現しない日が出てくるかもしれません。そうすると、日常的に頭痛があった人でも、「頭痛があることは異常なのだ。病気なのだ」と気づきます。そうした気づきを促すためにも、予防薬は有効なのです。

編集部編集部

そのほかにも予防薬はありますか?

宮崎 良平先生宮崎先生

片頭痛専用の予防薬として、近年、抗CGRP関連薬という新しい薬剤が開発されました。具体的にはエムガルティ、アジョビ、アイモビーグの3剤があり、いずれも注射によって投与します。

編集部編集部

注射の予防薬もあるのですね。

宮崎 良平先生宮崎先生

はい。これらの3剤は非常に効果が高く、しかも、効果が出現するのが早いとして注目を集めています。内服薬に比べて副作用も少ないため、内服薬を使用したけれど効果がなかったという方や、副作用が辛くて内服薬を継続できなかったという方でも安心して使用できます。最近では内服薬に先行し、なるべく早めに注射を使用する傾向が強まっています。

頭痛予防薬の注意点とは?

頭痛予防薬の注意点とは?

編集部編集部

頭痛の予防薬は、どれくらいの頻度で使用するのでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

基本的に内服薬の場合には頭痛の発作がなくても、毎日服用します。一方、抗CGRP関連薬の場合には薬によって注射頻度が異なりますが、エムガルティとアイモビーグは基本的に毎月1回注射をします。アジョビは1か月のほか、3か月に3本まとめて注射をすれば良いタイプもあります。またエムガルティのみ、初月は2本使用します。

編集部編集部

それらの治療薬は保険が適用になるのですか?

宮崎 良平先生宮崎先生

はい。いずれも保険が適用になります。

編集部編集部

そのほか、頭痛を予防するためには日常でどのようなことに気をつけたら良いでしょうか?

宮崎 良平先生宮崎先生

たとえば、頭痛がいつ起きたか、どのくらいの頻度で起きているのかなど、頭痛について記録をとると診察の際、医師に正確な情報を伝えることができ、適切な治療につながりやすくなります。頭痛の強度や頻度を記録し、「頭痛ダイアリー」をつけることで「頭痛の見える化」を行うことをおすすめします。

編集部編集部

頭痛ダイアリーをつける時の注意点を教えてください。

宮崎 良平先生宮崎先生

ひどい頭痛だけでなく、軽い痛みも記録することが大事です。軽い頭痛は間歇期(かんけつき/症状が治まっている期間)の症状として出現することがあるからです。頭痛の治療では、こうした間歇期の症状をなくすことが重要。そのため程度を問わず、どのような痛みであっても頭痛が起きたら記録することが重要です。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

宮崎 良平先生宮崎先生

予防薬の目的は、「痛みがない日を作ること」にあります。頭痛は非常に日常的なものであるため、「頭痛=病気」と思っていない人が多いのです。しかし痛みがあること自体が問題であり、それにより、日本は多くの経済損失を生み出しているという試算もあります。頭痛を放置すればするほど治療が難しくなりますから、頭痛で悩んでいる場合には早めに医師の診察を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

頭痛が起きるとすぐに市販薬を服用している人も多いと思います。そうなると市販薬が手放せなくなり、ますます痛みが強くなるという悪循環になりかねません。現在は、頭痛を「治す」ことができる時代です。もし慢性的な頭痛に悩まされていたら早めに専門医を受診しましょう。

医院情報

井土ヶ谷脳神経外科・内科

井土ヶ谷脳神経外科・内科
所在地 〒232-0052 神奈川県横浜市南区井土ケ谷中町158 アクロスキューブ井土ケ谷3F
アクセス 京急本線 井土ヶ谷駅 徒歩1分
診療科目 脳神経外科、内科

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