“赤いマフラー”のアイツを食い止めろ 再び忍び寄る「桜の敵」

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木曽岬町で見つかったクビアカツヤカミキリ=三重県提供 拡大
木曽岬町で見つかったクビアカツヤカミキリ=三重県提供

 サクラなどを枯らす特定外来生物クビアカツヤカミキリ(通称クビアカ)の脅威が迫っている。2019年に三重県木曽岬町で確認されて以来、県内の他市町では見つかっていないが、東の愛知は三重と隣接する地域で多く確認され、西の奈良では東に向けて拡大。徐々に忍び寄りつつあり、県も警戒している。【山本直】

 クビアカは体長2~4センチで黒光りする体と赤い胸部が特徴で、首に赤いマフラーを巻いているように見える。サクラやモモなどバラ科の樹木を好み、内部を食い荒らして衰弱させたり枯死させたりする。中国や朝鮮半島に生息しており、国内では12年に愛知県飛島村で初めて確認された。輸入木材や梱包(こんぽう)材に紛れて国内に入ってきたとみられている。

 初確認以降、生息域を急速に拡大。被害や成虫の存在が確認されたのは15年に6都県の8市町村だったが、23年には東京都や大阪府、群馬県など13都府県の122市町村にまで広がった。繁殖力が強く、自動車で運ばれるなどして分布域を拡大していると推定されている。

 三重も被害が確認された13都府県の一つ。19年6月25日に木曽岬町の街路樹のサクラで成虫が見つかり、約1カ月で雌雄計16匹が確認された。その後も町内のサクラの名所・鍋田川堤桜並木などで増加。約1000本のうち200本で被害が確認されているほか、モモなどの果樹で見つかった例もあるという。

 そもそも愛知県では、飛島村をはじめ木曽岬町と隣接する弥富市や蟹江町、愛西市など県西部で確認範囲が拡大。木曽岬町が水際で以西への拡大を食い止めている状態ともいえる。

 一方、西隣の奈良県では23年度に奈良市内で初確認されたのをはじめ、大和高田市や大和郡山市、天理市などで急増。毎年数万人が訪れる大和高田市の名所・高田千本桜では川沿いに植えられた1200本のうち100本以上でクビアカの寄生が確認された。

クビアカツヤカミキリ拡散防止のためサクラに巻かれたネットが今も残っている。現在は効果が薄いとしてこうした措置は取っていない=木曽岬町の鍋田川堤桜並木で2024年4月17日、山本直撮影 拡大
クビアカツヤカミキリ拡散防止のためサクラに巻かれたネットが今も残っている。現在は効果が薄いとしてこうした措置は取っていない=木曽岬町の鍋田川堤桜並木で2024年4月17日、山本直撮影

 和歌山県も三重との県境近辺では見つかっていないが、徐々に確認地点が南下しており、23年5月に御坊市、7月には日高川町で被害が初確認された。

 クビアカは特定外来生物法により、生きたまま持ち運ぶことが禁じられている。県は、見つけたらすぐに殺虫剤もしくは踏み潰すなどして駆除し、みどり共生推進課(059・224・2578)に連絡してほしいとしている。

被害拡大防止、各地で研究進む

 クビアカツヤカミキリは6~8月ごろに羽化し、樹皮の割れ目に多数の卵を産む。ふ化した幼虫が樹木の内部へ入り込んで食害が進むと木くずとふんが混ざった「フラス」が外部へ排出される。

 被害の拡大を防ぐ方法の研究は各地で進められており、森林総合研究所(茨城県つくば市)は一定の周波数の振動を発生させる装置を木に取り付けて幹を揺らし、産卵行動を抑制する方法を研究している。また、栃木県農業総合研究センターは肉眼での発見が難しいクビアカの卵にブラックライトを照射すると白く光る性質があることを発見。卵の駆除につなげたい考えだ。

 木曽岬町はフラスが確認された樹木について、幼虫が入り込んだ穴から樹幹に殺虫剤を注入して防除している。さらに今年度は樹皮に殺虫剤を塗布するなどして駆除を図ることも検討。殺虫剤は樹木に害を及ぼさないものを用いるという。

 一方、確認例がない京都府は今年1月、隣接する大阪で大きな被害が出ていることを踏まえ、専門家の樹木医を講師にクビアカの生態や防除法を学ぶ一般向け講習会を開催。侵入に備えている。

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