「地元に残って」娘に言いづらく 福島33市町村に「消滅可能性」

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福島県庁=2019年2月22日、荒川基従撮影 拡大
福島県庁=2019年2月22日、荒川基従撮影

 民間の有識者らでつくる「人口戦略会議」が24日に公表したレポートで、福島県内では浜通り地方の13市町村を除く46市町村のうち、7割超の33市町村が「消滅可能性自治体」に該当するとされた。2014年に日本創成会議が公表した推計では、東京電力福島第1原発事故の影響で県内の自治体は対象から外れていた。【岩間理紀、尾崎修二】

 今回のレポートは、人口移動がなく、出生と死亡だけの要因で人口が変わる「封鎖人口」と、移動傾向が一定程度続くとの仮定「移動仮定」のそれぞれで2050年人口を推計し、自然増減や社会増減の程度を評価した。子どもを産む中心世代となる20~39歳の女性人口(若年女性人口)について、20~50年の減少率が移動仮定で50%以上の自治体を「消滅可能性自治体」と定義した。

 県内では、33市町村が消滅可能性自治体となり、市を見ると、会津若松、白河、喜多方、二本松、田村、伊達の6市が該当した。移動仮定で若年女性人口の減少率が高いのは川俣町78.1%、平田村75.7%、鮫川村74.1%、三島町74.0%――の順だった。「消滅可能性自治体」には当てはまらなかったが、福島市でも44.8%、郡山市も41.4%に上った。

 浜通り地方は13市町村をまとめて推計し、移動仮定で若年女性人口の減少率が45.5%となり、「消滅可能性自治体」をかろうじて免れた。

 また、レポートは、移動仮定、封鎖人口ともに若年女性人口の減少率が20%未満の自治体を「自立持続可能性自治体」、出生率が低く、他の地域からの人口流入に依存する自治体を「ブラックホール型自治体」としたが、県内ではいずれも該当する市町村はなかった。

子育て、雇用充実急務 首都圏流出に危機感

 会津地方の「中心都市」の会津若松市。人口は1995年の13万7065人をピークに、近年は減少が続き、今年3月1日時点で11万2252人(県推計)に。今回のレポートで「消滅可能性自治体」の根拠となる20~39歳の若年女性は、「移動仮定」で2050年には53%減の5057人になると試算された。市は女性の首都圏への転出を課題とし、子育て環境の充実などに力を注いでおり、室井照平市長は「今後も危機感を持って人口減少対策に取り組んでまいる」とコメントした。

 若年女性が都市部に流出する背景には、充実して働ける環境の乏しさも指摘される。昨年、首都圏から田村市にUターンし、小学生の子を育てる自営業の女性(37)は「地元では『男は工場、女は事務員』のような働き方がモデルで、私の幼少期からあまり変わっていない。就ける仕事の幅が狭く、子どもたち、とりわけ娘には『地元に残って就職してほしい』とは勧めづらい」と打ち明ける。自身は県内外の取引先と主にリモートワークで仕事をしており、「私のような働き方はまだまだ地域で珍しい。もう少し広まれば、Uターンや移住は増えるかもしれない」と言う。

 喜多方市で暮らす3児の母(38)も「子育てしながら働ける職場を探しているが、なかなか見つからない。地方ならではの子育て環境の良さはあるので、若い世代の声を反映させた街づくりを進めてほしい」と話す。

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