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「上咽頭がんの初期症状」はご存知ですか?何科を受診すればよいかも解説!

 公開日:2024/04/25
「上咽頭がんの初期症状」はご存知ですか?何科を受診すればよいかも解説!

上咽頭がんは日本での発症率が低く、あまり知られていないがんの1つです。

上咽頭は鼻や耳とつながっており、上咽頭がんの発症は呼吸や聴覚に影響を及ぼします。

この記事では上咽頭がんの初期症状について、検査方法・治療方法と併せて解説します。上咽頭がんについて知り、早期発見に役立てていただければ幸いです。

渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

上咽頭がんとは?

上咽頭がんは頭頸部がんの1つです。頭頸部とは、鼻・口・のど・顎・耳やその周辺など、脳・目・頸椎を除く首から上の部分を指します。がん全体に対する頭頸部がんの割合は約5%で、さらに上咽頭がんの発生割合は頭頸部がんの中でも約3%です。
上咽頭がんはその名の通り、上咽頭に発症するがんを指します。咽頭とは、鼻の奥から食道の入り口までの約13cmの管です。咽頭は上から順に上咽頭・中咽頭・下咽頭の3つに分かれています。
上咽頭は頭蓋低(頭蓋骨の底)の直下、鼻の奥からのどの上部に位置しており、口を開けても直接見えない部分です。上咽頭がんは中国南部・東南アジア・北アフリカでの発症率が高く、日本を含むそれ以外の地域ではまれな病気です。発症率が高い地域とその他の地域における上咽頭がんには、組織型の違いがあることがわかっています。
発症率が高い地域でみられる組織型は、EBウイルス感染が原因と考えられています。
一方で日本などその他の地域における組織型の上咽頭がんの原因は解明されていません。現段階では、喫煙・飲酒との関連性が高いといわれています。
なおEBウイルス(エプスタイン・バー・ウイルス)は、大部分の日本人が乳幼児期に感染するヘルペスウイルスの一つです。感染しても症状が出ないことが多く、感染により必ず上咽頭がんが発生するものではありません。
日本で上咽頭がんと診断される方は、1年間で約750名です。男女比は、男性:女性が2~3:1と男性の方が多くなっています。年齢別では40~60歳で発症する方が多いですが、30歳以下の方が発症する場合もあります。

上咽頭がんの初期症状

初期の上咽頭がんは自覚症状がない場合もありますが、進行するにつれて症状が現れます。上咽頭がんの代表的な初期症状は以下のとおりです。

耳の閉そく感が起こる

上咽頭がんの腫瘍が大きくなると、耳の閉そく感が起こる場合があります。耳が詰まったように感じる原因は、がん腫瘍により滲出性中耳炎になるためです。
上咽頭と左右の耳は耳管でつながっています。がん腫瘍により耳管が塞がり、中耳(鼓膜の内側)で作られた分泌液が排出されずに溜まってしまう状態が滲出性中耳炎です。耳の閉そく感があるものの痛みはなく、音が聞こえにくくなります。

鼻づまりや鼻血が出る

上咽頭がんの初期症状は鼻の症状として現れる場合もあります。鼻づまり・鼻血・鼻水に血が混じるといった症状がある場合は上咽頭がんの可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。

頸部のリンパ節のしこりが出る

上咽頭がんは頸部(首)のリンパ節へ転移しやすいため、首にしこりができる場合があります。耳や鼻の症状がなく、首のしこりだけが症状として出ることもあります。

上咽頭がんの初期症状で行われる検査

上咽頭がんが疑われる場合の主な検査方法は、内視鏡検査・画像検査(CT・MRI)です。最終的に病理学的診断の結果によりがんの診断が確定します。各検査方法について解説します。

内視鏡検査

上咽頭がんの検査で最初に行われるのが内視鏡検査です。上咽頭は口を開けても見えない部位であるため、鼻から内視鏡を入れて病変の有無を確認します。
内視鏡の挿入時は鼻に局所麻酔をかけることで痛みを軽減します。

CT・MRI画像

内視鏡検査により上咽頭に病変が確認できた場合は、病変の深さや広がりを知るために画像検査を行います。CT検査はトンネル状の装置に入り体の周囲からX線を照射する検査です。
体の断面の画像が得られます。MRI検査も同じくトンネル状の装置に入り体の断面を撮影する検査です。磁石と電波を利用する点でCTと異なります。
CT検査よりもMRI検査の方が、がんの状態や範囲をより詳細に知ることができます。CT・MRIともにリンパ節や周辺の臓器への転移の有無を調べる際にも有効です。

病理学的診断

上咽頭がんの疑いがある病変が発見された場合は、その組織の一部を採取し顕微鏡で調べます。これが病理学的診断です。上咽頭の病変から採取した組織ががん細胞と特定されると、上咽頭がんと診断されます。

上咽頭がんの初期症状時の治療法

上咽頭がんは放射線が効きやすいという特徴があります。また鼻腔の奥からのどの上部にある上咽頭は手術が困難な部位であることから、治療の中心は放射線療法です。
初期の上咽頭がんでは放射線療法のみで治療する場合が多く、進行や転移の状況により薬物療法を併用します。

放射線療法

上咽頭がんの治療の中心となるのが放射線療法です。放射線の照射によりがん細胞を破壊し、がんを治癒・抑制します。上咽頭がんの放射線治療では、6〜7週間かけて30〜35回放射線を照射するのが一般的です。
放射線量をコンピューターで調節しながら照射する、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる方法が特に効果があるとされています。

薬物療法

初期よりやや進行した状態の上咽頭がんには薬物療法が用いられます。薬物療法は抗がん剤の投与により、がんの治療・症状の抑制・緩和を目指します。薬物療法と放射線療法を同時に行う治療方法が化学放射線療法です。
化学放射線療法は放射線療法を単独で行うよりも効果が高いとされており、患者さんの体の状態がよい場合に選ばれることがあります。さらに治療効果を高めることを目的として化学放射線療法の前後に投薬を行うなど、状況に応じて医師が判断します。

上咽頭がんの初期症状についてよくある質問

ここまで上咽頭がんの初期症状・検査・治療法などを紹介しました。ここでは「上咽頭がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

上咽頭がんの初期症状が出た際には何科を受診すればよいですか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

上咽頭がんの初期症状が出た場合は耳鼻咽喉科を受診してください。耳の閉そく感・聞こえづらさ・鼻詰まり・鼻血といった症状は耳鼻咽喉科に相談しやすいかと思います。首のしこりやその他の違和感など、上咽頭がんの初期症状かどうか判断に迷う場合は、かかりつけ医に相談して指示を仰ぎましょう。上咽頭がんは直接目で確認できない場所に発症するため、早めの検査が早期発見につながります。

上咽頭がんの初期に治療を行った場合の予後について教えてください。

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

上咽頭がんは早期に治療するほど5年相対生存率が高くなります。上咽頭がんの病期(ステージ)は1~4の4段階に分けられます。上咽頭以外の部位への転移がない、またはごく近くのリンパ節などへ転移があるステージ1~2の場合の5年相対生存率は約80%です。ステージ3になると80%を下回り、ステージ4の5年相対生存率は約50%となっています。ステージ4は、頭蓋骨内部や鎖骨の下といった広い範囲にがんが広がっている状態です。なお上咽頭がんは治療後2年以内に再発することが多いとされているため、治療後も継続的な通院・検査が必要です。

編集部まとめ

頭頸部がんの1つである上咽頭がんは鼻の奥からのどの上部にかけての上咽頭に発症するがんです。主な初期症状は耳の閉そく感・鼻づまり・鼻血・首のしこりなどです。

頭頸部がんが疑われる場合は内視鏡検査・画像検査により状況を確認し、病理学診断によって診断が確定します。

上咽頭は手術に適さない部位であることから、主に放射線療法により治療が進められます。

早期治療により治癒の可能性が高くなりますので、症状が出た場合は早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

上咽頭がんの関連する病気

「上咽頭がん」と関連する病気は7個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

いずれも上咽頭がんと同じ頭頸部がんに分類されます。日常生活を送るうえで重要な食事・呼吸・会話などに関連する部分のため、初期症状を知り早期発見につなげましょう。

上咽頭がんの関連する症状

「上咽頭がん」と関連している、似ている症状は3個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記は上咽頭がんの初期症状の場合がある症状です。このような症状がある場合は耳鼻咽喉科を受診しましょう。

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