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「仕事は見て覚えろ」。そんなふうに教わり、自分の力でスキルアップしてきたと自負する社会人は多いだろう。しかし、そんな教育論を1990年代後半以降に生まれた「Z世代」に振りかざしていいのだろうか。ある医学教育の実践からコーチング術を考えた。
「ベストティーチャー」の指導法
3月中旬の土曜日、横浜市立大の教室に学生ら約20人が集まった。月1回の課外授業「外科寺子屋」だ。
教員数人の手ほどきで、学生らは食肉を使っての皮膚の縫合に取り組んだ。
「いい。だんだんスムーズになってきた。何事も継続だよ」。横浜市立大の秋山浩利・診療教授(消化器・腫瘍外科)が声を掛けた。
縫合に取り組んだ3年生の男子学生(22)は「ミスをした。でも先生は『次ここは変えてみよう』と前向きに指導してくれた」と話した。
医学教育はこれまで座学による知識偏重だと指摘されてきた。寺子屋は、早いうちから外科の手技に触れてもらう狙いだ。2007年に始めた。
通常の授業でも秋山さんは、手術室にホワイトボードを持ち込み、細かく解説する。自身の手術を見せるだけの教員もこれまでは多かった。「それではいい医師は養成できないのでは」
手取り足取りを心掛ける秋山さん。学生からの投票で選ばれる表彰制度「ベストティーチャー賞」にたびたび選ばれ、「殿堂入り」をしている。こうした教育法を学生も支持していることを示している。
外科医の「高齢化」
秋山さんが研究や診療と並行して、教育に時間も手間もかけるのには訳がある。
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