宇宙への核配備禁止決議案を否決 安保理でロシアが拒否権

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
ニューヨークの国連本部=2023年7月3日、八田浩輔撮影 拡大
ニューヨークの国連本部=2023年7月3日、八田浩輔撮影

 国連安全保障理事会は24日、宇宙に核兵器などの大量破壊兵器の配備などをしないよう求める日米主導の決議案を否決した。15理事国のうち13カ国が賛成したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使した。中国は棄権した。

 人工衛星を標的にする核エネルギーを利用した兵器の開発を模索するロシアを念頭に、日米が起草して65カ国が共同提案した。決議案は宇宙空間での軍拡競争を防ぐため、核兵器やその他の大量破壊兵器を運ぶ物体を地球の周回軌道に乗せることを禁止するなど、宇宙条約を順守する義務を再確認する内容。宇宙条約にはロシアを含む約115の国と地域が参加している。

 米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、宇宙に核兵器を配備する計画はないと主張するロシアに対し、「それならばなぜ決議案に賛成しないのか。何を隠しているのか。不可解で残念だ」と訴え、棄権した中国に対しても「世界の核不拡散体制を守るよりもパートナーのロシアを擁護する姿勢を示した」と批判した。日米は宇宙で核兵器が爆発すれば、世界中の国や企業が運用する人工衛星に支えられた地球の社会経済活動が危険にさらされるとして、全会一致での賛成を呼びかけていた。

 中国は決議案について「不完全でバランスが悪い」と棄権した理由を説明した。中露はこの日の会合で修正案を提出したが、賛成と反対がそれぞれ7カ国、棄権1カ国で採択されなかった。ロシアは「我が国が宇宙での軍拡競争の防止に無関心であるかのように見せかける西側諸国の狡猾(こうかつ)な試み」だと主張し、拒否権の行使を正当化した。

 一方、米シンクタンク「軍備管理協会」のキンボール会長は声明で「宇宙空間への核兵器の配備は、(地球における)核兵器の威嚇や使用、核実験の再開と同様に平和と安全に対する容認できない挑発的な脅威とみなされるべきだ」と指摘。ロシアの拒否権について「(宇宙空間という)国際公共財の管理をめぐる重要な規範に対するロシアの姿勢に大きな疑問を投げかけた」とした。

 2023年の防衛白書では、中国とロシアが他国の宇宙利用を妨げる対衛星兵器の開発に着手しているとしたうえで、宇宙空間を「戦闘領域」や「作戦領域」と位置づける各国の動きが広がっていると分析している。【ニューヨーク八田浩輔】

あわせて読みたい

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月