イヌワシのひなをみんなで守ろう、ドライブウエーに柵 伊吹山

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人の立ち入りを防ぐための柵を設置する須藤一成さん=伊吹山ドライブウェイで2024年4月19日午前11時22分、長谷川隆広撮影 拡大
人の立ち入りを防ぐための柵を設置する須藤一成さん=伊吹山ドライブウェイで2024年4月19日午前11時22分、長谷川隆広撮影

 滋賀県米原市にある伊吹山(1377メートル)で昨年に続いて国の天然記念物、イヌワシのひなが誕生した。同市下板並の野生動物調査会社「イーグレット・オフィス」(須藤一成代表)が今月、母ワシの給餌行動を確認した。しかし、今年の巣は「伊吹山ドライブウェイ」直下にあるため、人の気配で親ワシが営巣放棄する恐れがあり、須藤さんの提案で同市などが19日、人の立ち入りを防ぐ柵を道路脇に設置した。

 伊吹山にはイヌワシのつがい1組が生息している。昨年2羽のひながふ化したが、餌不足で巣立てなかった。その様子はライブ配信され、特に「ニーナ」と名付けられたひなが飢えと闘いながら懸命に生き抜こうとする姿に多くの人が胸を打たれた。

イヌワシ保護のために取り付けられた表示=伊吹山山頂駐車場近くで2024年4月19日午前10時59分、長谷川隆広撮影 拡大
イヌワシ保護のために取り付けられた表示=伊吹山山頂駐車場近くで2024年4月19日午前10時59分、長谷川隆広撮影

 今年も当初は昨年と同じ場所で巣作りを始めたが、2月に山頂駐車場近くのドライブウエー直下に移って別の巣を作った。遠くから観察を続けていた須藤さんは今月10日、母ワシが巣の中に頭を突っ込んでひなに餌を与える様子が見られることを確認した。ひなの姿は巣の陰になってまだ見えないという。

 ドライブウエーは自動車専用で本来歩行者の立ち入りは禁止されているが、イヌワシを撮影する目的で立ち入るカメラマンが大勢いる。例年ガードレールを越えて崖の上にカメラマンがずらりと並ぶが、その周辺は、親ワシが見張りや餌の受け渡しなどで利用することもあるという。

 ドライブウエーは冬季休業中だったが20日に営業再開する。須藤さんによると、今回と同じ場所で7、8年前にも巣を作って産卵したが、営業再開の時期と前後して営巣放棄した。今年も営業再開後にはたくさんの人が一気に押し掛けると考えられ、対策が急務だった。

 19日は同市職員ら約20人が山頂駐車場から約450メートルにわたってドライブウエーの崖側ガードレール沿いに約1・5メートルの支柱を立て、そこに4本のワイヤロープを張った。前日には県がガードレールの外に出ることや餌付けなどを禁止する表示を7カ所に取り付けた。市の担当者が見回りも行う。

 須藤さんは「巣の場所をオープンにするのは、昨年同様にみんなで守っていくため。人が並ぶとストレスになって親ワシが巣に帰って来なくなる。子育てに影響が出ないように配慮してほしい。ひなが成長し、親子で飛ぶ時を楽しみにして見守ってもらいたい」と話した。

【長谷川隆広】

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