一瞬ではじけ飛んだ爪…「タカの鉄腕」津森宥紀の今も語り継がれる伝説マウンド

「タカの鉄腕」の足跡をたどる―。ソフトバンク津森宥紀投手(25)は昨季チーム最多の56試合に登板。4勝4敗、22ホールド、防御率3・51をマークするなどシーズンを通してフル回転した。東北福祉大時代の恩師で、2年冬から津森を指導した元日本ハム投手の上岡良一氏(57=現大学職員)が〝衝撃秘話〟を明かした。サイド右腕のルーツに迫った。

プロ野球

◆津森宥紀(つもり・ゆうき)1998年(平10)1月21日生まれ、和歌山市出身。和歌山東を経て、東北福祉大では1年春からリーグ戦登板。大学日本代表にも選ばれ、18年全日本大学選手権では最優秀投手。19年ドラフト3位でソフトバンク入団。1年目の20年6月21日ロッテ戦で初登板も、最初の打者井上にいきなり満塁弾を浴びた。翌21年からは3年連続で40試合以上に登板。176センチ、85キロ。右投げ右打ち。


◆上岡良一(うえおか・りょういち)1966年(昭41)8月11日、大阪府生まれ。桜宮高から野球を始め、2年夏には当時1年生だった清原和博、桑田真澄擁するPL学園に敗れた。阪神矢野燿大前監督は2学年後輩にあたる。東北福祉大では1年秋に明治神宮大会出場。3年時、4年時はともに大学選手権で準優勝。仙台6大学リーグでは通算12勝、防御率0・41をマークした。88年ドラフト4位で日本ハムに入団。プロ通算成績は2試合で0勝0敗、防御率7・71。引退後は会社員を経て、東北福祉大の大学職員に。05年から17年まで楽天スカウトを務め、18年からは再び大学職員に復帰した。

うそのようなアクシデント

東北福祉大には、今でも語り継がれる〝津森伝説〟がある。

6年前の出来事。津森が公式戦で奪った衝撃の3者三振ショーだ。

仙台6大学野球春季リーグの仙台大戦に7回裏無死満塁の場面で登板して好投した東北福祉大の津森宥紀=2018年5月6日

仙台6大学野球春季リーグの仙台大戦に7回裏無死満塁の場面で登板して好投した東北福祉大の津森宥紀=2018年5月6日

上岡氏は興奮気味にその秘話を赤裸々に明かしてくれた。

「痛かったと思いますよ。指の爪がまったくないわけですから。普通の人だったら投げられる状態でもない。でも、彼は投げたんですよ」

津森が大学3年生になる前のこと。3月の関東遠征中。

ベンチ裏で、右肩をアイシングするために座ろうとした瞬間だ。

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