夏の甲子園に新局面 酷暑対策で解消しきれなかったアクシデント

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第104回全国高校野球選手権大会の海星-日本文理戦の六回途中で足がつり、水分補給をする日本文理の選手(右)=阪神甲子園球場で2022年8月8日、吉田航太撮影
第104回全国高校野球選手権大会の海星-日本文理戦の六回途中で足がつり、水分補給をする日本文理の選手(右)=阪神甲子園球場で2022年8月8日、吉田航太撮影

 夏の甲子園大会は昼間を避けた日程を組むという新たな局面に入る。大会を主催する日本高校野球連盟と朝日新聞社は19日、第106回全国高校野球選手権大会(8月7日開幕、阪神甲子園球場)の最初の3日間を午前と夕方の「2部制」で開催すると明らかにした。酷暑の影響で体調不良を訴える選手が続出し、観客にも影響が出ている。「これだけ暑くなっている中で何も進まないという選択肢はない」(大会主催者)というほど抜本的対策は急務だった。

 主催者は地球温暖化や健康管理への問題意識の高まりを受け、近年さまざまな対策に取り組んできた。休養日の増設をはじめ、延長回から走者を置いた状態で始めるタイブレーク制度、投手の球数制限などルール面も見直した。ベンチに冷房設備を置き、黒色しか認めてこなかったスパイクは温度が上がりにくいとされる白色を認めた。昨夏の大会では、五回終了時に選手らが冷房の利いた涼しい部屋で水分補給をしたり、体を冷やしたりする10分間の「クーリングタイム」を導入したが、試合中のアクシデントは解消し切れなかった。

 高温多湿の中で足がつって緊急降板するエースや倒れ込むなどする選手が相次いだ。審判も足がつってしまって交代を余儀なくされるケースもあった。気象庁などが気温の上昇によって健康被害が生じる恐れがある場合に発令する「熱中症警戒アラート」の中で大会が行われる事態にもなり、日中開催の厳しさも指摘されていた。主催者は「最も暑い時間帯であろう午後2時の試合を避けてみることでどんな効果があるかを見たい」と説明する。

 ナイター開催は避けられず、夜遅くまで試合が延びた場合に高校生が試合をしたり応援したりすることの是非や、観客の入れ替えなど課題もある。大会は近年、「4試合日」を中心に日程を組んでいる。今大会の「2部制」は3試合日に限っており、タイトな大会運営が求められる4試合日では見送られた。

 今後は本格的な導入につながるのか。主催者は「課題を洗い出し、今後は4試合日の2部制も探っていきたい」と強調する。安心安全な大会を継続するためにも、大きな試金石となりそうだ。【長宗拓弥】

甲子園大会での主な健康管理対策

  時 期             対策の内容

2018年春 延長十三回から無死一、二塁で攻撃を始めるタイブレーク制度導入

  19年夏 暑さ対策などから準決勝翌日に休養日を新設し、2日間に増やす

  20年春 1人の投手が1週間に投げられる球数を500球以内に制限

  21年夏 休養日を3回戦終了後にも入れ、3日間に増やす

  23年春 タイブレーク制度を延長十回から適用

     夏 五回終了時に水分補給などで10分のクーリングタイム導入

       熱中症対策などで18人のベンチ入り選手を2人増員

  24年夏 酷暑を避けるため開幕3日間を朝と夕方に分ける「2部制」を一部導入

※20年春のセンバツは新型コロナウイルスで中止

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