1型糖尿病患者の障害年金支給認める 国が逆転敗訴 大阪高裁

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大阪高裁判決を受け、「完全勝訴」と書かれた旗を掲げる原告側の弁護士=大阪市北区で2024年4月19日午後3時1分、高良駿輔撮影 拡大
大阪高裁判決を受け、「完全勝訴」と書かれた旗を掲げる原告側の弁護士=大阪市北区で2024年4月19日午後3時1分、高良駿輔撮影

 血糖値を下げるインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」の患者8人が、障害基礎年金の支給を打ち切った国の処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁は19日、原告側敗訴とした1審・大阪地裁判決を取り消し、年金の支給を認めた。本多久美子裁判長は8人の症状を個別に検討し、「日常生活に著しい制限を受けており、国の処分は違法だ」と判断した。

 原告は大阪などに住む32~55歳の男女8人で、未成年の頃に発症した。年80万~100万円の年金が支給される障害等級2級と認められていたが、国は2016年までに詳しい理由を示さず支給対象外の3級としていた。

 判決は1型糖尿病について、血糖値に応じてインスリン投与が必須で、根治は難しいと指摘。意識障害に陥ることもあるため、「(患者は)常に不安を抱え、食事、行動、仕事などで慎重な配慮が強いられる」と述べた。

 続けて、年金支給に向けた国の認定基準は「合理的だ」と判断したうえで、2級に該当するかどうかのポイントについて「症状や血糖コントロールの状態などを総合的に考慮し、日常生活が著しい制限を受けるか否かを判断すべきだ」との考え方を示した。

障害基礎年金の支給を認めた大阪高裁判決を受け、記者会見する原告の滝谷香さん(中央)=大阪市北区で2024年4月19日午後4時56分、高良駿輔撮影 拡大
障害基礎年金の支給を認めた大阪高裁判決を受け、記者会見する原告の滝谷香さん(中央)=大阪市北区で2024年4月19日午後4時56分、高良駿輔撮影

 この観点を踏まえ、8人を詳細に検討した。インスリンの投与量や血糖値をノートに記録したうえで月1回の受診を続けても、頻繁に低血糖で意識がもうろうとなるとし、「いずれも日常生活に支障がある」と判断。国が支給を打ち切ったのは違法だと結論付け、処分を取り消した。

 判決後、大阪市内で記者会見した原告の滝谷香さん(41)=大阪府岸和田市=は「長い闘いだったが、諦めずに頑張って良かった」と喜んだ。弁護団長の川下清弁護士は「障害の重さ、日常生活の苦しさを真摯(しんし)に受け取った判決だ」と評価した。

 一方、厚生労働省は「関係省庁で判決内容を精査した上で対応していきたい」とのコメントを出した。

 原告らが起こしていた以前の訴訟では、19年4月の大阪地裁判決が支給を打ち切った国の処分を違法と判断。この判決は確定したが、国が病状への評価を添えて再び不支給としたため、患者らが再び提訴した。21年5月の1審判決は症状の重い1人に対する年金支給を認めたが、残る8人の訴えを退けていた。【木島諒子、高良駿輔】

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