阪神佐藤輝明内野手(25)がプロ4年目で初のサヨナラ安打を放ち、今季初の3連勝&9日ぶりの5割復帰を導いた。

1-1の延長10回無死満塁。巨人守護神大勢から右前に運び、満員札止めの甲子園を歓喜させた。打率は1割台の低空飛行だが3度のV打点はリーグ最多タイ。チームは10試合連続2点以下の球団ワーストに並んだが、この間4勝4敗2分けのしぶとさ。19日からの首位中日3連戦は背番号8の完全復活で打ち勝ちたい。

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誰が誰だか分からない。跳びはねて喜ぶヒーロー佐藤輝をめがけて、前川や植田から、ペットボトルの雨が降る。「寒い~」。この感覚がたまらない。チーム初のサヨナラ勝ちは、悩める男のバットだった。「うれしかったです。もう覚えてないです。めちゃくちゃ、かけられました」。ヘッドバンドから水をしたたらせ、会心の笑顔を見せた。

力と力の勝負を制した。1-1の延長10回。大山が深刻敬遠され、無死満塁で巡ってきた。打率は1割台でも虎党はいつも背番号8に夢を託す。大歓声の中、大きく息を吐きながら打席に向かった。今季無失点の最強クローザー大勢は、初球から剛球勝負できた。5球目の158キロを必死に当ててファウルにし、勝負の6球目。フルカウントでも見逃すつもりはなかった。

佐藤輝 真っすぐ勝負は分かっていた。振り負けないようにいきました。絶対に力が入るので、力を抜いてリラックスしていきました。なんとか抜けてくれてよかったです。

熱い心のまま、頭は冷静に保っていた。内角に食い込む155キロを振り抜き、鋭く一塁手の横を抜いた。最高のフィナーレだ。実はプロ入り初のサヨナラ安打だった。今季の勝利打点は同僚の森下らに並ぶリーグトップの3個目。佐藤輝のバットが火を噴けば、阪神の勝利が近づくことを、また証明した。

もがきに、もがいてきた。オフから固めてきた新フォームだが、まさかの開幕から絶不調。ただ、今の佐藤輝には頼れる「相棒」がいる。森下だ。目指す打撃スタイルが似ていることもあり、意気投合。後輩でもリスペクトを持って接する。「あの球、どうやって打った?」「どういう狙いだったの?」。印象的な快打を続ける森下に、技術面やアプローチまで、質問するのが日常だ。その森下とともに難敵の菅野、大勢から得点を奪い取った。

打線の低迷はまだ底を打っていない。これで球団ワーストに並ぶ10試合連続の2得点以下。佐藤輝も責任を痛感している。「最後、打てたので、それはよかったと思います。これをきっかけにもっと打っていけるように頑張ります」と誓った。お立ち台を終えると、応援席からの大合唱が甲子園に響いた。「テ~ル! テ~ル!」。チームも今季初の3連勝で9日ぶりの勝率5割に復帰。さあ、ここからだ。【柏原誠】

▼佐藤輝が10回にサヨナラ安打。佐藤輝は23年8月12日ヤクルト戦でサヨナラ犠飛を打っているが、サヨナラ安打は自身初めてだ。また、阪神は7日ヤクルト戦から続く2得点以下が、これで10試合連続。連続2得点以下の記録は62年国鉄と93年巨人がマークした12試合が最長だが、阪神では59年と12年に記録した10試合に並ぶ球団ワーストタイ。