新潟水俣病判決「差別のため請求ちゅうちょ」と指摘 原告は控訴検討

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新潟地方裁判所=増田博樹撮影 拡大
新潟地方裁判所=増田博樹撮影

 水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく救済を受けられなかった新潟水俣病の未認定患者らが国と原因企業の旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に損害賠償を求めた訴訟の判決で、新潟地裁は18日、原告26人を水俣病と認め、1人当たり400万円(総額1億400万円)の賠償を同社に命じた。国への賠償請求は棄却した。原告側は控訴を検討する。島村典男裁判長(鈴木雄輔裁判長代読)は「住民らは差別・偏見のため原因企業への賠償請求をちゅうちょしていた」と述べた。

 同種の訴訟は全国4地裁で起こされ、判決は3件目。昨年9月の大阪地裁と今年3月の熊本地裁の判決はいずれも水俣病の未認定患者がいることを認めたが、賠償請求を認めるかは判断が割れていた。今回の判決で新潟水俣病でも特措法の救済から漏れた患者が存在することを示した形だ。

阿賀野川と旧昭和電工鹿瀬工場の地図 拡大
阿賀野川と旧昭和電工鹿瀬工場の地図

 特措法は国の認定基準を満たさない患者も救済し、水俣病問題の「最終解決を図る」として2009年に施行。だが原告の多くは期限(12年7月)までに救済を申請できず、訴訟を起こした。今回は原告149人のうち先行して結審した47人に対する判決だった。

 1965年に公式確認された新潟水俣病を巡っては、国の責任を認めた司法判断が一度もなく、主な争点となった。原告は遅くとも61年末までに国が有機水銀の排出や周辺住民に健康被害が生じることを予見できたと主張していた。

 判決は、新潟水俣病のメカニズムが明らかになったのは65年以降だと指摘。61年の時点では住民の健康被害を予見できず、国が規制権限を行使しなかったことも「著しく合理性を欠くとはいえない」として原告側の主張を退けた。

 一方、水俣病と認定された原告26人については、水銀摂取の状況や症状の内容、経過を考慮すれば「水俣病に罹患(りかん)している高度の蓋然(がいぜん)性がある」と判断した。そのうえで不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が適用されるかどうかについて検討。提訴段階で発症から20年以上が経過していたが、請求をちゅうちょしていたことを踏まえれば、除斥期間の適用は「著しく正義・公平の理念に反する」として原因企業に賠償を命じた。

 他の原告19人については水俣病と認めず、残る2人は行政認定を受けているため判断しなかった。

 旧昭和電工は「判決内容を確認し対応を検討する」とコメントした。【中津川甫】

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