アイヌ先住権訴訟 原告側の訴え退ける 札幌地裁判決

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札幌地裁=岸川弘明撮影 拡大
札幌地裁=岸川弘明撮影

 北海道浦幌町のアイヌ民族団体が、河川でのサケ捕獲は先住民族が持つ固有の「先住権」だとして、現行法や規則で禁止されないことの確認を国と道に求めた訴訟で、札幌地裁は18日、原告側の請求を退けた。アイヌ民族の先住権を巡る訴訟の判決は初めて。原告側は判決を不服として控訴する方針。

 原告は、江戸時代から浦幌十勝川流域でコタン(集落)を構成していたアイヌ民族の子孫らでつくる「ラポロアイヌネイション」。現在は原則禁止されている川でのサケの捕獲は先祖から引き継いだもので、漁業権として認められるべきだと主張。河口から上流4キロ以内で刺し網漁をする権利を求めていた。

 これに対し国、道側は、漁を禁じる水産資源保護法などについて「資源の枯渇を避けるために必要な規則」だと反論していた。

 中野琢郎裁判長(小野瀬昭裁判長代読)は判決で、先住民族であるアイヌ民族が「憲法13条により固有の文化を享有する権利を有する」とした上で、「アイヌの生活、伝統、文化において重要な部分を占めるサケの捕獲は最大限尊重されるべきだ」とした。

 しかし、原告側の主張した漁業権については「財産権の側面が強い」とし、「公共用物である河川で特定集団が排他的に漁業を営むことは許されない」と判断。水産資源保護法についても「合理的でアイヌの人々の文化享有権に対する不合理な制約とまでは言えない」と結論付けた。先住権については触れなかった。

 同団体会長代行の差間啓全(ひろまさ)さん(57)は判決後、「先祖がなりわいとしてサケを捕ってきたのは事実。この判決で気持ちは覆らない」と語った。【後藤佳怜】

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