非婚手当、非婚式…非婚ムーブメントの韓国 それでも残る偏見と批判

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非婚をテーマに発信しているホンサムピギョルのエイさん(左)とエスさん=ユーチューブチャンネルより
非婚をテーマに発信しているホンサムピギョルのエイさん(左)とエスさん=ユーチューブチャンネルより

 結婚する気がない。近しい人にそう言われたら、「なぜ?」と聞いたり、「そういう人に限って真っ先に結婚する」と否定したりしたことはないだろうか。

 結婚を前提にした社会を問う、韓国発のエッセー2冊が翻訳出版された。企業による非婚手当や、結婚しない宣言をする非婚式が登場するほど、韓国では今、非婚がムーブメントになっている。だが非婚女性である著者たちは、いまだ結婚しないことに対する社会の偏見と闘っているという。彼女たちの紡ぐ等身大の言葉には、自分らしく暮らすヒントが詰まっている。

「非婚」の定義も人それぞれ

 刊行されたのは、クァク・ミンジさん著「私の『結婚』について勝手に語らないでください。」(清水知佐子さん訳)と、ホンサムピギョル著「未婚じゃなくて、非婚です」(すんみさん・小山内園子さん訳)。

 1985年生まれのクァクさんは放送作家やコラムニストとして活躍する。2020年、結婚しないライフスタイルを紹介するポッドキャスト「ビホンセ」を始めた。ホンサムピギョルは、会社員のエスさんとエイさんが組んだユーチューバーコンビ。ともに90年代生まれ(年齢は非公表)で、19年から非婚をテーマに発信している。

 3月中旬、それぞれの本の担当編集者を招いたトークイベントが東京・神保町のブックカフェ「チェッコリ」で開かれた。まず話題になったのが、非婚の定義だ。「結婚しない」ことを意味するが、そのニュアンスは2冊で微妙に異なる。

 クァクさんにとって、非婚は多様な生き方の一つだ。<私の日常に結婚が入ってくる隙(すき)と理由がないことを身をもって実感しながら生きているだけ>とつづる。恋愛や冠婚葬祭にまつわる体験、家族への思いをめぐるユーモアあふれる文章がページを彩る。

 本書を手がけた亜紀書房の斉藤典貴さんは「『非婚』を生きる少なくない女性の存在を示すことで、社会の意識を変えたいという切実な思いと、多様性を認めて『一人を共に生きていこう』という温かいメッセージが込められたエッセー」と紹介した。

 一方、ホンサムピギョルは<男性中心の社会に反旗を翻し、既存の結婚制度へ反対する>、いわば「反婚」の意味で非婚を宣言する。本の中、それぞれの文章が交互につづられ、エイさんが「結婚主義者」だった過去や2人のフェミニズムとの出会い、さらには「推し活」や財テクなど豊富な話題が軽やかに紡がれる。

 左右社の編集者、神山樹乃(みきの)さんは「家父長制に反対しようと、はっきり意思表示した本。『自分はこう生きている』と主張しつつ、読み口は割とライトです」と語った。

自由に生きたいという願い

 韓国では、10年ほど前から非婚を表明する「非婚主義者」が増えている。なぜなのか。

 イベントに参加した訳者の清水さんによると、非婚を表明する人が増え始めた当初は…

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