新潟水俣病、旧昭和電工に1億円賠償命令 国への請求認めず 地裁判決

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「ノーモア・ミナマタ」第2次新潟訴訟の判決で、「国の責任を認めず」などと書かれた紙を掲げる原告団=新潟市中央区で2024年4月18日、猪飼健史撮影
「ノーモア・ミナマタ」第2次新潟訴訟の判決で、「国の責任を認めず」などと書かれた紙を掲げる原告団=新潟市中央区で2024年4月18日、猪飼健史撮影

 水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく救済を受けられなかった新潟水俣病の未認定患者らが国と原因企業の旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)に1人当たり880万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が18日あり、新潟地裁は原告26人について「水俣病に罹患(りかん)している高度の蓋然(がいぜん)性がある」と認め、各400万円(総額1億400万円)の賠償を同社に命じた。国への賠償請求は認めなかった。

 原告149人のうち先行して結審した47人に対する判決。今回の訴訟は、新潟県の住民らが2013年に集団提訴し、その後も原告が追加されていた。

 新潟水俣病は新潟県の阿賀野川流域で発生。上流にあった旧昭和電工鹿瀬工場の排水に含まれるメチル水銀が原因となり、汚染された川魚を食べた流域住民らに健康被害が広がった。熊本県の水俣病公式確認から9年後、1965年に公式確認され、「第2の水俣病」と言われる。

 特措法は国の認定基準を満たさない患者も救済し、水俣病問題の「最終解決を図る」として09年に施行されたが、原告のほとんどが期限(12年7月)までに救済を申請しておらず、訴訟で国などに直接賠償を求めていた。

阿賀野川
阿賀野川

 主な争点は国の責任だった。原告側は、熊本県で水俣病の発生源となったチッソ水俣工場と同様に水銀を使う全国6工場で、国が実施した排水調査に着目。水銀が検出された61年までに国は新潟水俣病の発生を予見でき、排水規制をしていれば発生や被害拡大を防げたと主張した。国は「公式発見以前に発生を具体的に認識していなかった」と反論した。

 このほか、原告が水俣病に罹患(りかん)していると認定するかどうか、不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用などが争点となった。

 「ノーモア・ミナマタ」第2次訴訟と呼ばれる同種の訴訟は、新潟と大阪、熊本、東京の4地裁で起こされ、判決は3件目。昨年9月の大阪判決は原告128人全員を水俣病と認定したうえで国などに賠償を命じ、今年3月の熊本判決は請求を棄却した。

 環境省は「国との関係では原告の請求が棄却されたものと承知している。今後とも、公害健康被害補償法の丁寧な運用を積み重ねていくとともに、地域の医療・福祉の充実、地域の再生・融和・振興に取り組んでいく」とのコメントを出した。【中津川甫、山口智】

新潟水俣病

 1965年5月、新潟県の阿賀野川流域で公式確認されたメチル水銀による中毒症。阿賀野川上流で操業していた旧昭和電工(現レゾナック・ホールディングス)鹿瀬工場の排水にメチル水銀が含まれ、汚染された川魚を食べた人が発症した。四大公害病の一つで「第2の水俣病」と呼ばれる。行政の認定や水俣病被害者救済特別措置法などで救済された患者は計3696人(2024年3月末時点)に上る。

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