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「今のアフガニスタンには深刻な治安上の問題は存在しない」。2022年11月にアフガンの首都カブールでイスラム主義組織タリバン暫定政権のアブドル・ナフィ・タコール内務省報道官に取材したときのことだ。過激派組織「イスラム国」(IS)の アフガンの分派「ISホラサン州」(IS―K)について尋ねると、そんな答えが返ってきた。
同じイスラム教スンニ派ではあるものの、異なる学派の教えに従うタリバンとIS―Kは敵対してきた。各地でテロ事件を繰り返すIS―Kに対し、タリバンは掃討作戦を展開。タコール氏は「ダーイシュ(ISの別称)は、ほぼせん滅されている。あなたもカブールに来てみて、アフガンが平和であると自分の目で見て分かったはずだ」と胸を張った。
しかし、この取材から約3週間後の22年12月中旬、インドの自宅に戻ってツイッター(X)を眺めていると、流れてきた画像を見て思わず声を上げた。自分がカブール滞在中に宿泊したばかりのホテルが炎上し、高く煙を上げていた。武装勢力がホテルを襲撃し、爆発物を起爆させたのだった。
このホテルは中国人の利用客が多く、地元では「チャイニーズホテル」と呼ばれていた。後にISが中国人を狙った犯行だったとする声明を出した。外国人宿泊者の死者はなかったが、ホテル前の通りで肌寒そうにショールを巻いて銃を抱えていた若いタリバンの警備兵の姿を思い出した。襲撃事件の多くでは、武装勢力はまず建物前の警備兵を殺害して侵入経路を確保する。アフガンではテロの正確な死傷者数が公表されないこともあり、彼がどうなったのか考えると背筋が凍る思いがした。
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