「給与増より仕事減を」教職調整額大幅増に、教育現場から冷めた声

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教員の働き方改革を議論する中央教育審議会特別部会で文部科学省が配布した資料。残業代を支払わない代わりに一律支給される教職調整額の水準を議題としている=東京都千代田区で2024年4月12日午後、斎藤文太郎撮影
教員の働き方改革を議論する中央教育審議会特別部会で文部科学省が配布した資料。残業代を支払わない代わりに一律支給される教職調整額の水準を議題としている=東京都千代田区で2024年4月12日午後、斎藤文太郎撮影

 「ブラック職場」と言われる公立学校教員の給与制度が半世紀ぶりに見直されることになりそうだ。その案は、時間外勤務手当(残業代)を支払わない代わりに支給される「教職調整額」の割合を現行の給与月額4%から10%以上に引き上げるというものだが、教育現場や有識者の反応は芳しくない。「給料は今のままでいいので業務を減らして」。聞こえてくるのは、人員増や業務圧縮を求める切実な訴えだ。

中教審委員の大半は「給特法維持」

 教職調整額の引き上げを検討しているのは、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)の特別部会。4日に開かれた会合では、教員給与特別措置法(給特法)に規定された現行の教職調整額のあり方が論点の一つとなった。

 「(残業代を払えば)長時間労働を助長する危険がある。業務の質の違いを無視した不公平も生じかねない」

 「一定の裁量を任されている教員に対し、(どこまでが業務かを)切り分けることは学校現場の状況にはなじまないのでは」

 教員の業務は自発性、創造性が必要とされる特殊性があり、一般的な残業のルールがなじまないと考えられてきた。委員からは、そうした給特法の考え方を維持した上で教職調整額の引き上げを求める意見が大半を占めた。

 給特法が施行されたのは1972年。教職調整額を4%にした根拠は、同法制定前の66年時点の労働時間だ。当時の教員の平均残業時間は月約8時間で、そこから算出した。

 しかし、その根拠は大きく揺らいでいる。文科省が2022年度に実施した公立校教員の勤務実態調査では、月平均残業時間は小学校で約41時間、中学校で約58時間と推計される。学校に求められる役割が増えるとともに教員の多忙化は進む一方、どれだけ働いても残業代は支払われない。それゆえ、給特法の規定は「定額働かせ放題」とも揶揄(やゆ)される。

現職教員に響かぬ改革案

 教員の働き方改革は、こうした流れを受けて始まったものだ。現行の給与体系を維持する方向で進む議論を、現職の教員はどう見ているのか。

 「正直、調整額引き上げにインパクトはない。…

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